世間一般に言われる「いい医者」とはどんな医者のことなのでしょうか。ヤブ医者と呼ばれるよりは、いい医者・いい先生と言われたいですよね。
世間はどこを見て「いい医者」と判断しているのか、医師として知っておきたいポイントを解説していきます。
一般の方が思い描く「いい医者」の定義として、まず欠かせない要素は患者の話を「聞く力」挙げられるのではないでしょうか。傾聴する力は、患者に安心感を与え、「きちんと自分の主張を汲み取ってもらえた」という満足感につながります。
患者から問診を行ったつもりでも、患者としては「伝えそびれたこと」があるかもしれません。症状や経過に関連して「そういえばこんなエピソードもあった...」という情報は、聴取しそびれると患者からするともやもやしたものが残ります。
さらに、医師にとっても適切な病態の把握につながらない可能性があるのです。医師目線で考えると、「聞く力」というよりは、「聞き出す力」といった方が適切かもしれません。
精神科の医師や心理カウンセラーなどは基本的なスキルとして「傾聴する」という作業を無意識的に行っています。傾聴のテクニックには様々なものがありますが、例えば「復唱する」という作業。
患者が「喉が痛くて、物も飲み込めないくらいで...」と訴えれば、「飲み込むのも辛かったんですね」と言いながらカルテに記録する。もちろん復唱は始終繰り返していると不自然になりますが、ときどき混ぜることで患者の印象は変わるものです。
毎日の診療ではたくさんの患者を診なければならないため限界はありますが、患者が「親身になってくれている」と感じるような医師は「いい医者」と評価される傾向にあります。
一般的にいい医者といえば、確かな知識と腕があることも挙げられるでしょう。どんなに親身になってくれても、結局病気が治らなければ患者の満足度は上がらないからです。
また、世間一般でいい医者といわれる医師は、説明が上手という特徴があります。説明するスキルも医師としての技術のうちと考えられます。
自分で知識を持っているだけでなく、それを患者がわかるように伝えることで、「この医師は確かな知識に基づいて治療している」という印象を与えることができるのです。
「いい医者」と呼ばれる人は、図や模型を使って丁寧に説明してくれたり、臨床検査のデータも何を意味しているのか細かく教えてくれることが多いです。
聴覚的な情報だけでは頭に入っていかないこともあるので、図を書いて見せるなど視覚的にわかりやすく説明することは患者から好印象となるでしょう。
あるベテランの内科医の言葉を借りると、「自然治癒力に勝るものはない」とのこと。もちろん薬が必要な病気も多いですが、一般的な風邪だと薬がなくても自然治癒していきます。
闇雲に薬を出しすぎる医師は、「いい医者」とはみなされないことが多いようです。逆に「他の先生はこの薬を出してくれたのに...」と薬を出さないことによる不満が生じることもあるので、いずれにせよ「悪い医者」と思われる可能性はあります。
そこで大切になるのが、「薬の説明を丁寧にする」ということです。なぜその薬を処方するのか、あるいはなぜ薬を処方しないのかをしっかり説明できる。そんな医師が「いい医者」とみなされるのでしょう。
精神科などでは、ちょっとしたうつ病などでもすぐに薬を処方する医師も多く、逆に症状が悪くなってしまう患者もよく目にします。周囲の医療スタッフから見れば明らかに自閉症の症状があるのに、統合失調症と診断して薬を処方する医師もいるでしょう。
薬は何でも出せば良いというわけではなく、根拠を持って必要なものだけを処方することが大切です。そして、根拠に基づいた処方だということが患者に伝わるような対応が「いい医者」になるためには欠かせないことといえます。
一般的に「いい医者」と呼ばれる医師にはいくつかの共通点があります。評価のために治療を行っているわけではありませんが、今は患者とのコミュニケーションが大事な時代です。
頭で理解することと、実践することは別問題なので、いい医者の条件を満たすことができるよう日々の行動を振り返ってみたいところです。