最新のIT技術を駆使し、医療現場において今、遠隔医療の本格導入が進んでいます。2018年2月には、厚生労働省が情報通信技術を用いて患者を診療する場合の呼称を「オンライン診療」と統一するとともに、ルール整備に向けて検討会が開催されています。
そこで今回は、遠隔医療の進展について解説します。
医師によるオンライン医療相談プラットフォーム「first call」を運営しているMediplatが、登録している医師約1000人に対し遠隔医療についてアンケートを実施したところ、遠隔医療について、賛同する医師は2016年3月の88パーセントから91パーセントと微増していることがわかりました。
9割以上の意思が賛同している一方で、「賛成だが参画はしないと思わない」方の割合は46パーセントと約半数を占めていることもわかっています。参画はしないと思う理由として「費用と報酬が見合わない」「多忙にて対応が難しい」という意見の他に、「何かあった時のルールが不明」という意見もありました。
厚生労働省で2018年2月に開催された検討会では、医師法第20条で定められている「無診察診療の禁止」の解釈を明確にするという観点から、ルール整備およびガイドラインの作成が勧められており、2017年度中にはガイドラインが策定される見通しとなっています。
ガイドラインが策定されるなど、国ぐるみで進んでいる遠隔医療の推進ですが、すでに遠隔医療を導入している地域もあります。
北海道では、タブレット端末やスマートフォンを通じて、遠隔医療や遠隔地の医療関係者の会議ができるシステムを民間会社が開発しました。北海道内では地方の医師不足が深刻な問題となっているとともに、医師一人あたりの長時間労働も問題となっています。
開発されたこのシステムを使えば、地方に住む患者が都市部に住む医師の診断を受けることが可能となるため、道内における医療および介護関係者の働き方改革につながることが期待されています。このシステムは主に道内の医療機関を中心に提供されており、医療の現場におけるインフラとして活用してもらいたいと開発者は話しています。
また、福岡市では地元医師会と医療機関、そして企業がタッグを組み、新しい医療の形を探る試みが行われています。例えば福岡市内にあるクリニックでは、患者が来院したらまずiPadでの問診を受けることで、医師が直接問診を行う前におおまかな状態を把握することができるといった試みが行われています。
このような取り組みが2018年度からのオンライン診療における有効性や安全性に対するエビデンスを作るために、市内20弱の医療機関で行われています。このように、すでに遠隔医療は様々な現場で利用され始めているのです。
遠隔医療において、へき地医療の解消などの他に患者側にとってもう一つ、遠隔診医療のメリットがあります。それは、遠隔医療によって「羞恥心」を考慮した診療を可能とするという点です。
保険診療のみならず、自由診療であっても医師が直接問診を行い、適切な治療薬を選択することが重要である診療があります。
例えばEDについては、患者が医師との対面診療に対して羞恥心から診療をためらう方も多くなっています。そこで、直接対面せずに直接問診を行える遠隔医療が導入されることで、羞恥心に配慮しながら診療を行うことが可能となり受診しやすくなるのです。
このように遠隔医療の導入を進めることは、医療者側だけでなく、患者側にとってもメリットが多いものであるということがいえます。
遠隔医療が導入されることで、医師側としては通信技術を介して患者とやり取りするため、これまでとは異なる情報収集対策が必須となります。AI技術も医療に取り入れられている中、今後患者を診療していくにあたっては、こういったデジタルツールを使いこなせるようになることも、医師として重要となっていくことが考えられます。