最近、インターネットの世界やビジネスの話題でIoTという技術が話題になっています。これは、全てのものがインターネットにつながり様々な情報が分析、送信され実際に活用される仕組みのことなのですが、このシステムが医療現場に非常にマッチしていることがわかってきました。
今回は、実際の医療現場でIoTの技術がどのように活用され、また今後はどのような将来性が見込めるかの解説をしていきたいと思います。
IoTとは、モノのインターネットと呼ばれます。
色々なセンサーから情報を取得し、得た情報がインターネットを介して受信されます。そのデータを解析し、さらに送信し、また利用されたデータ情報をフィードバックして分析する仕組みです。
これまでは患者は病院を受診してその都度、検査を受け結果が出て治療を開始するという流れで行われてきました。
IoTの技術を利用すれば、患者宅でも24時間体制で体内の生体データを取得し、インターネットを介して遠隔で情報を取得することができるようになりました。
例えば、不整脈を測定するためのホルター心電図への利用が考えられます。
ホルター心電図は、いつ起こるかわからない不整脈を見つけるために、体に簡易の心電図を装着し、24時間記録します。それを病院に持っていて心電図記録としてみるものです。
こういった検査も、IoTを利用すればリアルタイムに病院の電子カルテに送信されることが可能になり、医者もデータがいち早く確認でき、患者にとっても無駄な受診回数が減るというメリットが考えられます。
このIoTのシステムは医療現場に非常にマッチしたシステムと言えます。
例えば、糖尿病の患者の治療への利用方法があります。
これまでは、病院を受診した時や、必要な患者には入院していただき適時、血糖値を測定し、必要に応じて治療を介入させてきました。
ここでIoTの技術を利用すれば、血糖測定のできるセンサーを装着することで、24時間体制で血糖値のデータが送られます。
その血糖値の推移を、食事の内容や時間など色々なファクターを入力して解析することで、どのタイミングで血糖が最も上昇するのかを解析します。
その情報を自動的にインスリンポンプのセンサーに送信し、より的確なタイミング、的確な量でインスリン注射を行います。
さらに、そのインスリン治療を行なっている中でのデータがフィードバックされてきますので、日々効率的な治療介入の手助けになります。
何より、これらのIoT情報はビッグデータとして医療現場に蓄積されてきますし、解析もできるので多くの患者により汎用性のある治療法への適用が見込めるのです。
このように、IoTを利用することで医療現場における治療に革命的なアプローチが行える可能性を秘めています。
IoTを医療現場の様々な場面に利用することで、効率的な医療が行えるだけでなく、医療労働市場における労働不足の解消や医療コストダウンも視野に入れられています。
そして世界の医療現場における医療でのIoT技術の市場は、2014年には584億ドルであったものが、2022年には4100億ドルへと大幅な拡大が見込まれており、今後も大いに期待の持てる数字になっています。
しかし、同時に大きなリスクも抱えます。
これはIoTを医療に利用する際に、インターネット上で情報をやり取りするため問題となる情報の秘匿性です。
医療現場における患者の情報というのは極めて個人的な内容であり、個人情報保護が叫ばれるようになり、電子カルテのセキュリティもかなり厳重なものになってきました。
IoTがさらに医療現場で利用されるようになるためには、より強固なセキュリティシステムの構築が必要です。
医療現場におけるIoTの活用は、患者個々の症状や病状に応じた、まさにオーダーメイド医療を実現する大きな一助になると思われます。 しかし、同時に、非常に重要な患者個々のデータが流出したり、悪用されたりしないように、さらなる情報技術革新が待たれるところです。