昨今の医療業界においてモンスターペイシェントという言葉を聞く頻度が高まっていますが、種々あるクレームの中には「治療によって思ったような結果が出せていない」事に対するものもあります。
医師からすれば、検査結果に対して適切な処置をしていると感じられると思いますが、このような時、患者様の心理状態はどのようになっているのかを知っておくと、クレーム被害を未然に防ぎ、適切な応対を行うことができるかもしれません。
そこで、今回はこのような事態が発生するメカニズムの一端をご紹介します。
このようなクレームが発生する背後には「(これで治るはずだという)期待を裏切られた」あるいは「病態への強い不安」が隠れているものと考えられます。もちろんそうでない場合もあるのでしょうが、患者様の強い不安が"自身の外側に対する攻撃性"として現れているケースは決して少なくはないでしょう。
風邪、あるいはちょっとした怪我や炎症などの微細なものであれば、このような事態には発展しないのでしょうが、病態が厳しいものであればあるほど"期待を裏切られた事への反動が大きくなってしまう" という心理状態に陥るものです。
その気持ちがご自身の心に向いた時には不安や絶望等を始めとする鬱等、ネガティブな心理状態になり、医師や看護師の方等、自身の外側へ向いた時には"強い不安を抱えきれないが故の攻撃性"に転じてしまう事があります。
このような事態は、第三者として客観視すると冷静に対処できるのでしょうが、実際にクレーム被害に遭うと「何故、そこまで言われなければいけないのか」と感じてしまうかもしれません。しかし、その裏には強い不安が隠れていることを理解しておけば、穏やかな対応を行うことができるのではないでしょうか。
では、医師等にクレームをつけてしまう患者様はどうしてそのような心理状態に陥ってしまうのでしょうか。実は、強い不安や期待が発生してしまうその裏には、ある暗黙のルールがあります。それは、「病気は医師が治すものである」という事実です。実際、医師の方が診断を下し、患者様に治療を行う為この考え方は決して間違ってはいません。
しかし、この考え方は一歩間違えば「どうしてきちんと治してくれないのか、あなたは医者でないのか」と強く非難されてしまう可能性をはらんでいます。というのも、そもそも病気という存在に対して強い不安を抱いている方が多いにも関わらず、その方々は医師に診てもらえばなんとかなるに違いないと強い期待をしているわけです。
人間誰しもがそうですが、強い期待を裏切られた場合に反発してしまうことはよくあります。ましてや、その背景に"不安"があるのでは、致し方ない所もあります。
近年、自然治癒力や免疫力という言葉を多々聞くようになりましたが、人自身にも体を治す能力が備わっています。医師だけが責任を持って頑張るのではなく、患者様ご本人も責任を持って自身の心身を管理する。このような考え方が広まれば、医師への一方的な依存が解消され、問題が減るのかもしれません。
昨今、医師に患者様の心のケアまでを求められることが増えてきています。医師としてのスキルだけではなく、人柄やコミュニケーション能力までもが求められる時代になったという話もよく聞きます。
多忙の中で"病"のみを対象としてしまうことが多いと思われますが、可能な範囲で少しでも"安心感を持って頂けるよう"に、心の状態を含めたケアが必要な時代になったのではないでしょうか。
このような場合。対応に苦慮するケースが多いものですが、初期段階、あるいは同様のクレームを防ぐための接し方などを考慮していれば、被害を防げるものも多いのではないでしょうか。ぜひ、参考にして頂ければと思います。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |