医療業界において、呼吸器疾患患者が増加しているという事実は既知のものと言えますが、その新たな原因として「新型タバコ」が絡んでいるかもしれないのだとすれば、どうでしょうか。これまでも、幾度となく肺がんを中心とした肺疾患と喫煙との関係性については大いに議論されてきた所でありますが、確実に因果関係があるとする結果はまだ正確な答えが出てないように思います。
そのような中で、アイコスなどを始めとする加熱式タバコの人気に火が付き、新型のタバコに関してはその認知度、利用率も上昇の一途をたどっています。しかし、利用者の中には旧来の紙タバコを愛用されている方もおり、新旧のタバコが出回っているというのが国内における現状と言えるでしょう。
ただ、もしも新旧タバコの二重使用が呼吸器系の不調と関係があるのだとすれば、どうでしょうか。今回は国内でも注目度の高いこのテーマについて少しまとめてみました。
最近になって、スウェーデンの研究グループが、新型のたばこと旧来の紙タバコの同時使用に関する疾患のリスクに関して、統計学的に調査した論文を医学雑誌"JAMA"にて発表しました。同グループによれば、閉塞性肺疾患、喘息の調査に関連した約3万人を対象に、電子タバコの使用と呼吸器系疾患の関係を調べたところ、注目に値するデータが得られたとのことです。
先ず、紙巻きタバコの喫煙本数が増加するほど、その本数に比例するように電子タバコの量も増えることが分かりました。また、呼吸器系の疾患に繋がるであろう呼吸器の不調と言う点で調査をしたところ、新旧の同時使用者が一般的であり、また、新型タバコを単体で使用している方においても、同様の不調が多く見られたとしています。
新型タバコは体に安全であるとする情報が先行しているような印象がありますが、実態としては上記のように「新型タバコだけを使用していても、呼吸器疾患のリスクがある」と推察するに十分なデータが発表されています。
また、同研究結果の中では、新旧タバコを同時に使用する二重使用者においては、4.03倍のリスクがみられたとのこと。紙巻きたばこ、電子たばこの使用者は1.46~2.55倍とされていますが、同時使用することにより最終的なリスクが4倍以上になった、ということになります。
ただ、この調査結果はあくまでも欧米によるものであり、日本で販売されているものとは新型の加熱式タバコと言っても若干の違いがあるため、必ずしも同じように考えることはできないようです。その最も大きな違いは、欧米で販売されている電子タバコにはニコチンが添加されている、という点です。
ただ、ニコチン無添加であっても、蒸気そのものが呼吸器疾患リスクを高めるという説も唱えられ始めているため、今後は更なる検証が必要とみられます。
紙巻きタバコは有害であり、電子タバコは有害でないとするイメージを持たれる一般消費者が多いようですが、海外を中心に"電子タバコから出る蒸気には一定の有害物質がみられる"とする報道も飛び交っているところであり、このような新旧タバコ論争には当面注目する必要があるものと思われます。
同研究グループは、新型の加熱式タバコは結果的に禁煙へ誘導することが難しいため、呼吸疾患のリスクを高めるだけではないかとも警告をされています。
日本においてはこのような"加熱式タバコにおけるネガティブな情報"はあまり浸透していないこともあり、医師の方々においては率先して"新型タバコにも呼吸器疾患のリスクが考えられる"という事実を、認知しておかなければならないのではないでしょうか。
酒、タバコ等の嗜好品は多くの人に愛される半面、使用に関しては一定のリスクが考えられるため、常習的にはならないよう気をつけたい所ですが、そう簡単にはコントロールできない側面もあります。また、各種疾患との因果関係が直接的にはないようにも思えますが、実際にどうかという部分は未だブラックボックスの中にあると言えます。そのような中においては、こういった研究結果から"様々なリスクについて"学ぶことが多いかもしれません。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |