運転をする医師であれば自動車保険への加入は必須ですが、実はお得に申し込む方法があるのをご存知でしょうか。
また、患者が薬を飲んだときや、患者に精神疾患があるときなどの自動車運転で万一事故が起こったときは、誰が責任を負うことになるのでしょうか。
今回は、医師として知っておきたい自動車保険にまつわる情報をまとめてご紹介します。
すでにご存知の方も多いかもしれませんが、自動車保険は各地域の医師会や医師協同組合から申し込むとお得になるように設定されています。
各都道府県の医師会などから申し込むと、通常よりも5%ほど安く保険に加入することができるのです。加入の条件は、医師会の会員であることを掲げているケースが多いです。
医師会を経由して保険を申し込むと、「医師会」という括りで集団扱いとなるため、保険料が割安になる仕組みになっています。どうせなら安く済ませたいという人で、医師会から保険に加入していないという人は、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
他の保険会社ですでに契約済みであっても、無事故による割増引は継承されるケースが多いため、医師会経由で見積もり依頼をしてみると良いでしょう。
自動車事故に関連して医師が知っておきたいこととして、処方薬の影響が挙げられます。病院で処方された薬を飲んだ状態で運転し、自動車事故を起こしてしまった場合には、自動車保険に加入していても補償が受けられないのでしょうか。
違法ドラッグだけではなく、医師が処方する薬も法的な枠組みの中では「薬物」の範囲になります。ただ、薬を飲んだときの事故で補償が受けられるかどうかは、結論からいうとケースバイケースです。
その薬を飲むと事故が起こることがあらかじめ予想されている場合には補償されないこともあります。
逆に処方されていた本来飲むべき薬を飲んでいなかったことによって起きた事故の場合には、事故が起こっても補償されない可能性があります。
場合によってどこに過失があったのかという判断は異なりますが、いずれにせよ投与する薬の種類や量には十分注意し、副作用として眠気が強くなる薬があれば運転を控えるようにしっかりと説明することが望ましいでしょう。
2014年に日本精神神経学会が、「患者の自動車運転に関する精神科医のためのガイドライン」を作成しました。
このガイドラインは、道路交通法により精神疾患のある人が自動車事故を起こした場合には、健常者よりも重い罪を課すとしています。
日本精神神経学会は、ガイドラインの中でこの法律については医学的根拠のない差別法と冒頭で謳いながらも、法律には遵守すべきとして方針を提示しています。
健常者であれば自動車保険に加入して万一に備えるだけですが、精神疾患のある人へのフォローが医療現場でもより一層求められてくるでしょう。万一のときに患者が重い罪に問われることを防ぐためです。
患者への具体的なアドバイス法としては、運転時間を短くすることや、混雑時間帯や夜間、高速道路などは運転しないこと、慣れ親しんだ道のみを運転するなどが、ガイドラインの中で掲げられています。
それらに則って患者や家族への指導も必要となってきます。
今回は医師が知っておきたい自動車保険や運転にまつわるトピックをご紹介しました。
自分を守ることはもちろん、医療現場でも患者の命を守るために運転を目標としたフォローを行っていくことが求められます。
特に精神科では道路交通法の改正を受け、患者の運転へのフォローがより密に必要となっていることを念頭に置いておきましょう。