仮想通貨は紙幣のような実物があるわけではなく、その実態はインターネット上でやり取りされる電子データです。
では、どのようにその安全と価値は保証されているのでしょうか? 入手方法や使用法と併せて、仮想通貨の仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。
仮想通貨を入手する方法は3つあります。 1つは、交換取引所で法定通貨と交換する。2つ目は知人など個人から購入する。そして最後がマイニングです。 いずれの場合も専用のアプリケーションをダウンロードするか、ウェブアプリケーションを利用します。
代表的な仮想通貨ビットコインの場合、アカウントは開始以来の取引記録が保持されている「フルクライアント」、ウォレットのみを保持しそれ以外の情報は取引所など、第三者のサーバーに依存する「軽量クライアント」、ウォレットも含め全てを第三者のサーバー上に置いておく、「ウェブクライアント」があります。
クライアントの作成は、交換取引所にアカウントを開設するか、スマートフォンにモバイルウォレットのアプリをダウンロードすれば簡単に行えます。
マイニングとは分散化通貨発行のことで、コンピュータを使って数学的な問題に正解を出し仮想通貨を獲得することです。 この場合、アプリケーションをダウンロードしてフルクライアントを作成し、仮想通貨のネットワークに参加する必要があります。
ビットコインの場合、およそ10分に1回正解が出るように問題の難易度が設定されています。いち早く正解にたどり着くため、高性能のサーバーを何台も用意しアルゴリズムを用いて自動計算をさせたり、たくさんのコンピュータをつないで手分けをして計算したりします。
仮想通貨の主な技術は、先に述べたマイニングという分散化通貨発行、分散化された取引検証、ピア・ツー・ピアネットワーク、そしてブロックチェーンに集約されます。
仮想通貨の価値が担保されるのは、参加者によってマイニングの計算過程や取引記録などが検証され、正しい情報が全員に記録・蓄積されるからです。マイニングで問題が解けた人はその解答と直前10分間の取引記録を、ブロックと呼ばれる情報の塊にしてネットワークに送信します。参加者はそれを検証し問題なければデータベースに蓄積します。正解者は解答分と取引記録にかかる手数料分の仮想通貨を獲得します。
このような参加者による相互承認はプルーフ・オブ・ワークと呼ばれ、ピア・ツーピアネットワークという分散システムによって成り立っています。そして、情報の塊であるブロックが鎖のようにつながっていくことことから、この仕組みをブロックチェーンといいます。
ブロックチェーンによって、いったん参加者に承認された正解や取引記録は簡単に改ざんすることができません。もし誰かが書き換えようとすると、過去にさかのぼって全員の記録を書き換えなければならないため、膨大な計算が必要となり事実上不可能です。
このようにマイニングや取引の検証を分散することで、記録の非可逆性を保証し仮想通貨の価値を担保しているのです。
代表的な仮想通貨ビットコインの場合、取引所あるいはスマートフォンやコンピュータに自分のウォレットを作成すると、秘密鍵が自動的に生成され、その秘密鍵から楕円曲線上のスカラー倍率を使って公開鍵が、そして公開鍵からハッシュ関数を使ってアドレスが生成されます。
この流れは一方向でアドレスや公開鍵から秘密鍵を逆に計算することはできません。こうしたウォレット内の情報は例えるなら、アドレスは名前、公開鍵は口座番号、秘密鍵はPINコードや署名といった役割をしています。
仮想通貨を利用する人は、支払い先のアドレス、公開鍵、そして秘密鍵から生成された電子署名などの情報をつけ、金額を指定し、その情報の塊をネットワークに送信します。これがトランザクションと呼ばれる取引記録です。
ネットワークに送られたトランザクションは、マイニングをしている人が拾い上げ、正解と一緒にブロックにまとめネットワークに送ります。それが検証・承認・蓄積されてトランザクションは参加者に共有されます。これにより、仮想通貨は安全確実に支払われたことになります。
仮想通貨の所有権は、アドレス、公開鍵、秘密鍵によって担保されています。つまり、この3つの組み合わせを第三者が知れば、その人は他人のウォレットにある仮想通貨を自由に移動させることができてしまいます。仮想通貨の流出は、仮想通貨の仕組みの問題ではなく、こうした情報が盗まれた結果発生してしまうものです。
仮想通貨は、分散ネットワークや検証システム、暗号技術などを組み合わせて、電子データの信頼性を確保することでその価値を担保しています。 利便性が高い反面、秘密鍵が盗まれてしまうと簡単に流出してしまい、取り戻す方法はありません。万全なセキュリティ対策と慎重に利用する心構えが不可欠です。