値上がりした仮想通貨を使って何かを買っただけでも、差額に税金がかかることをご存知ですか?
将来仮想通貨が、医療費の支払いや医薬品の購入などに使われる可能性もあります。仮想通貨で思わず大きな利益や損失が出たとき、慌てないよう納税や税金対策をたてておきましょう。
仮想通貨が身近になるにつれ、利益が出たときの申告や納税について気になる人も多いでしょう。国税庁は2017年12月、仮想通貨にかかる所得の計算方法を示しました。 それによりますと課税対象となるのは、仮想通貨の売却益、仮想通貨同士の交換による利益、値上がりした仮想通貨で商品やサービスなどを購入したときの差額、の3つです。
いずれの場合も、入手価格や要した諸経費を差し引いた利益に所得税が課せられます。入手価格とは、仮想通貨を手にしたときに支払った金額や対価のことです。 同じ年に同じ仮想通貨を何回かに分けて手に入れた場合、入手価格は移動平均法を用いて計算します。ただし、継続して使用することを条件に総平均法を用いることも可能です。
仮想通貨が分裂した場合は、分裂時点で新たな仮想通貨には相場がないため入手価額は0円となります。 マイニングにより仮想通貨を取得した場合は、入手時点の価格からマイニングに要した費用を差し引いて所得を計算します。
以前、仮想通貨はモノとして扱われ、購入時には消費税が課せられていましたが、資金決済法によって、2017年7月から消費税が非課税となりました。
仮想通貨の利益は税法上雑所得に区分され、給与所得者の場合20万円以上の利益があれば確定申告が必要となります。税率は一律10パーセントの住民税を含めて、15パーセントから55パーセントとなり、総所得が多いほど税率が高くなります。 すでに浸透している外国為替証拠金取引、いわゆるFXの場合、利益は先物取引に係る雑所得に分類され申告分離課税となり、税率は一律20パーセントです。しかし、仮想通貨を使ったFXは申告分離課税制度の対象にならないので、雑所得として総合課税による申告が求められます。
ただし、事業所得者が事業の決済手段として仮想通貨を持ち、仕入れなど商取引の決済に使用している場合、利益は事業所得に分類されます。つまり、開業医が医薬品や医療機器の購入のために仮想通貨を持ち、それを支払いに充て、結果として利益が出た場合は事業所得となります。
株式は証券会社の特定口座に預けておけば、証券会社が譲渡益から税額を計算し、代わって納税もしてくれます。しかし、仮想通貨の利益や税額は自分で計算しなければなりません。
購入や交換による利益は、交換業者・取引所のサイトから取引記録をダウンロードして計算します。
商品などの購入による差益は、どの仮想通貨を何単位、何に使ったかを知るため、レシートなどの記録が必要になります。 確定申告にレシートの添付は不要ですが、税務署からの問い合わせに備えて、5年間は保存しておくことが求められます。
税金対策をいくつか挙げておきましょう。 新しい仮想通貨を入手する場合は、新規購入がお勧めです。持っている仮想通貨と交換すると差益が出ることがありますが、新規購入であれば利益が出ないので、税金を抑制することができるのです。
仮想通貨の譲渡、交換によって利益や損失が出た場合、損益通算をすると税額を減らせます。給与や配当所得などとの損益通算は認められませんが、雑所得の中では可能です。 たとえば、Aという仮想通貨を譲渡して利益が出ていても、Bという仮想通貨の価値が下がっていれば、それを売って損失を出せば、差し引きができ税額を圧縮することができるのです。
さらに、経費を上手に活用することも大切です。たとえば、仮想通貨を学ぶための書籍代やセミナー参加費は経費に算入できるので、こまめに記録を取っておくとよいでしょう。 仮想通貨取引で大きな利益が出た場合、翌年に納税が必要なため、資金を手元に残しておくことを忘れないようにしましょう。万一過少申告したり申告をしなかったりすれば、税額に5パーセントから50パーセントの加算金が発生します。忙しいからといって申告を忘れてしまうと高い代償を払うことになります。
仮想通貨をやりとりしていると、知らないうちに差益が出ていたり、思わぬ利益や損失を被ったりすることがあります。 勤務医であっても金額によっては確定申告の必要があり、いざというときに慌てないよう税金対策をしておくことが大切です。