医師によるハラスメントとして、「ドクターハラスメント」という言葉も普及し始めましたが、実際に医師の何気ない一言にショックを受ける患者は少なくないようです。
配慮に欠けた言動による影響を考えて、今一度患者対応や言葉遣いを見直していきましょう。
普段、医師が診療の中で何気なく発する言葉は患者にとって想像以上に重みがあるものです。
おなかの周りに出た湿疹のために病院へ足を運んだ患者の例では、医師が「肝臓がんによくある湿疹」といった主旨の発言をしました。ちょっとした湿疹だと思って受診しているところ、"肝臓がん"の可能性を示唆されては不安も募ります。
さらにその患者が健康診断のデータを見せて肝機能に異常がなかったことを医師に示そうとすると、全く見ようともしなかったというのです。
このケースでは、医師は無神経な発言によって不安を煽るだけ煽って、患者の心理状態に対する配慮が足りなかったといえるでしょう。医療機関を受診する患者は、「がんかもしれない」といった直接的な表現だけでなく、「この部分が気になるね」「あれ、ここはなんだろう......?」など何か病気や異常を示唆するような発言には不安を感じてしまうのです。
それが患者に向けた発言ではなく、独り言の範疇であったとしても、何気ない一言が「ドクターハラスメント」として患者にショックを与えることがあります。
インターネット上では、「ドクターハラスメント」などのキーワードで検索してみると、医師が発した言葉に対して不満や憤りを感じる患者の書き込みが多数ヒットします。もちろん一方の言い分だけが書かれている状況ではありますが、どう見ても医師の対応が粗末である場合も少なくありません。
これは理不尽に要求や主張をする"モンスターペイシェント"の範囲とはいえないでしょう。
その場では平然を装っていても、家に帰ってから「今日医者にこんなひどいことを言われた」と怒りがこみ上げる患者もいるのです。医師が発した何気ない言葉で患者を傷つけるだけでなく、やりとりの一部始終がインターネット上に公開されてしまい、その口コミを見た人が病院の受診を敬遠するといった事態にもつながりかねません。
病院の評判を守るためにも、言葉遣いや発言には日頃から気をつけるようにしていく必要があるでしょう。また、病院で相手にするのは客ではなく患者ではありますが、人を相手にするという点では医療も"サービス業"の顔があることを忘れることはできません。
治療成果もそうですが、患者対応に配慮することで患者の満足度をトータルで上げていくことが求められるでしょう。
都市部を見てみると、大きな総合病院から小さなクリニックまで、多数の医療機関が存在します。
病院・クリニックと形態は様々ですが、今の医療制度ではたくさんの患者を診療しなければ利益が上がらないような仕組みになっています。そのため、"患者が継続して通ってくれる病院であるか"という点は重要なポイントです。
目に何らかの不調が生じて眼科に行きたいと思ったとき、地方であればそもそも眼科の数が少なく、選択の余地があまりないでしょう。
しかし、都市部では徒歩圏内に違う眼科があるといったケースも少なくありません。同じエリアにあっても、毎日患者が少なくガラガラ状態のクリニックもあれば、予約をしても待つ必要があるほど混雑したクリニックもあります。
大きな病気でない限り、治療内容や出してもらう薬はそれほど変わらないと考える人が多いですが、付加価値として通いやすい雰囲気であるか、医療スタッフが誠実で信頼に足る人柄であるかといった要素は大切なファクターとなるのです。
医療スタッフの接遇や患者対応のスキルは、いかにたくさんの患者に通ってもらえるかという病院経営の面にも影響を及ぼすことがある点は意識しておきたいところです。
医師の何気ない一言が患者に与えるショックは想像以上に大きく、インターネット上の掲示板にも大量の書き込みがあるほどです。
患者の満足度は治療内容だけでなく患者対応・接遇によっても左右される部分があるため、患者とのラポール形成はもちろん、病院経営という視点からも大切にしていきたいところです。