米国での調査によると、米国の医学部出身の医師と比べ、米国以外の海外医学部出身の医師が担当した方が、患者の死亡率が低くなることが示されました。
従来から海外医学部出身の医師に対する偏見があったといわれていますが、逆に外国人医師の方が優秀であったということになります。
米・ハーバード大学大学院の津川友介らの研究チームは、米国・米国以外のどちらの医学部の出身であるかによって、医師の治療結果に影響があるかを調査しました。
欧米では海外出身の医師に依存している傾向にあり、米国で働く医師のうち4人に1人は海外出身とも考えられていました。
米国以外の医師は、イギリスやカナダ、オーストラリアといった先進国から来ていることが多く、地方の医療など米国人が敬遠するような仕事を積極的に引き受けてきた歴史があります。
量的に外国人医師に依存する反面、"質"の面では実態が明らかにされていませんでした。米国内では「外国人医師の方が医療の質が少し低いのでは」といった偏見があることも過去の研究から示されていました。
そこで、米国および米国以外の医師による治療がどのように異なるか質を評価した研究を行ったところ、世界から注目を集めることになったのです。
ハーバード大学の津川氏は、過去にも男性医師と女性医師では、女性医師が担当した方が予後が良いという調査報告も行っており、話題となりました。
今回の調査では、"入院後30日以内の死亡率"を指標にして医療の質を検証しています。入院後30日以内の死亡率は、医療の質を測る上で注目されている指標の一つです。
調査対象となったのは、米国においてメディケアを受給している約4万4000例のデータ。入院時のデータを用いて、担当医師による死亡率の違いを調査しています。
調査の結果、米国以外の海外医学部を出た外国人医師が治療した方が、患者の入院後30日以内の死亡率が低くなることが示されました。
米国の医師と比べるとわずか0.4ポイントの差でしたが、これは米国が10年かけて新薬・新しい医療機器、ガイドラインの作成を通して達成してきたレベルと同じであるといわれています。
従来より存在した、「外国人医師の方が劣るのではないか」というイメージとは真逆の結果が示されたといえるでしょう。
加えて、外国人医師はより重症な患者を積極的に担当しようとしていたとも述べられています。
トランプ大統領は就任後、7カ国を対象に入国禁止措置を取ったり、メキシコとの国境に壁を作ろうとするなど、他を排除するような政策を続けています。
今回の調査では、外国人医師がいることによって受ける恩恵も大いにあることが明らかとなりました。
アメリカの医療現場では、量的に海外の医師に依存していることは知られていましたが、新たに"質"という側面でも依存度合いが高いことが示唆されたということでしょう。
国籍だけで一括りにして排除することで、優秀な人材を追い出してしまうことにも繋がりかねません。トランプ大統領は「アメリカファースト」を掲げていますが、本当に自国のことを考えるのならば外国人を受け入れなければならない領域もあるのです。
トランプ大統領はもともと不動産のプロであり、その他の領域については知識や経験が及ばないこともあるといえますが、こうした調査結果を踏まえて医療の質を担保していってもらいたいところです。
今回の調査では、米国よりも海外医学部出身の方が医療の質が良いことが示されました。
日本の場合にはまた別途調査をしなければわかりませんが、少なくとも優秀な人材を海外から迎え入れる姿勢は大切といえるでしょう。
壁を作らず、より高い質の医療を提供できる体制を整えていきたいものです。