2016年、アメリカでは世界が注目する大統領選が行われました。
トランプ大統領の誕生に当たり、Post-Trump Stress Disorder(アメリカ大統領選後ストレス障害)という用語まで作られましたが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一種として注目されています。
2016年、トランプ大統領が当選する前からアメリカでは"選挙によるストレス"に着目していました。アメリカ心理学会によると、支持政党に関係なく、調査対象となった人の半数以上が選挙に関連して大きなストレスを受けていたことが明らかになりました。
調査に参加した人の多くは、ソーシャルメディア上で選挙に関連したやりとりがなされることにストレスを感じたようです。
アメリカの心理協会は、選挙とストレスの関係を調査したところ、ソーシャルメディアを多く使う人の方がそうでない人と比べて大きなストレスを受けていたことから、"プラグを抜くこと"を呼びかけていました。
日本国内でも、SNS上で結婚報告をする人に対して嫌悪感を抱くユーザーが多いことがテレビなどでも取り上げられるようになりましたが、確かにソーシャルメディア上のやりとりには反応が過剰になっている節があるのかもしれません。
アメリカの大統領選においても、ケースによっては家族や親族が分断されるほどの大きな摩擦を生んだこともあり、政治だけでなく身近な人間関係に与えた影響も大きかったことがうかがえます。
アメリカにおいて、精神科領域ではPost-Trump Stress Disorder(アメリカ大統領選後ストレス障害)という言葉も誕生するほど、選挙のストレスが米国人に与える影響は大きかったと考えています。
頭文字をとれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と同じになりますが、実際にPTSDのような症状が生じることがあるとして、社会問題になっているようです。選挙の結果に失望し、納得できず、これまで通りの生活に戻れない人が増えてきているのです。
従来のPTSDといえば戦争や災害などで驚異を感じたり、目撃したりしたときにフラッシュバックや強い不安が生じるものと定義されていました。
実際にアメリカの退役軍人に見受けられる心的外傷のレベルには匹敵しないものの、たくさんのアメリカ人がPost-Trump Stress Disorderを経験したといわれているのです。
トランプ大統領の支持率は、史上最も低かったといわれています。就任後もいくつかの大統領令を打ち出し、7カ国からの入国を禁止して家族が一時的に分断されてしまったケースも存在します。多くの人が不安や驚異を感じていることは事実なのです。
選挙後のストレス障害という側面もありますが、今後も継続的にストレスを受けていくことになる米国人もいるでしょう。
アメリカのメイヨークリニックでは、Post-Trump Stress Disorderにおいて、従来のPTSDに見られるような古典的な症状の他、過敏性やいらだち、攻撃的な行動、罪悪感、抑うつ、アルコール依存、薬物乱用に結びついていく可能性があると懸念しています。
またアメリカの心理士であるクーパー氏は、まずは自分が外傷に苦しんでいることを認め、他の人が同じ経験をしていることを確認する必要があると述べています。感情的・行動的な側面から時間をかけてアプローチしていく必要があるようです。
トランプ大統領が選挙で当選するまでのプロセス、あるいは就任後の数々の政策をめぐってストレスを感じる米国人は少なくありません。
実際、PTSDに近い症状に悩まされている人もおり、アメリカの心理士を含め医療機関が対応に当たっているようです。
それほどまでに大統領選の影響は大きかったのです。