暴力団幹部との交際や虚偽の報告書作成の疑いが持たれている京都府立医大病院。
暴力団のような反社会的勢力と接点があったとなれば、これまで築き上げてきた信頼も失われてしまいます。
今回は騒動の概要をご紹介し、医師として肝に銘じて置きたいポイントをまとめていきます。
京都府立医大病院では、指定暴力団山口組の幹部2名について虚偽の診断書や意見書を作成した疑いが持たれていました。
暴力団幹部の高山義友希受刑者は、2014年7月に生体腎移植の手術を受けました。翌年6月には懲役8年の実刑判決を受けましたが、8月に虚偽の疑いがもたれている報告書が作成されました。報告書に「拘禁に耐えられない」と記載されたことから、結果として高山受刑者は収監を免れる形となったのです。
意見書には、術後に免疫抑制剤を服用したためにウイルスによる腎炎が生じたことを記載していました。ところが、この内容が虚偽であり、実際には収容に耐えることができるレベルの健康状態であったのではないかと疑問の声が上がりました。
刑務所にも医療を受けるための環境があるため、そこで十分対応できる状態であったのではないかと考えられていました。高度な医療を担う公立病院で反社会的勢力との繋がりが疑われ、さらに虚偽の診断書作成についても疑問視されるなど世間を騒がせました。
書類を作成した担当医は、任意の事情聴取にて当初は「院長の指示でやった」とコメントしていました。さらに「自分は服役が可能だと思った」とも述べています。ところが、その後は一転して「嘘は書いていない」と否定するなど不自然な点がありました。
さらに、この担当医がそれほど重症ではなかったことを示唆していたように、別の医療機関によるデータ分析の結果からも、重篤であったことを否定する見方が強いこともわかったのです。
院長は疑惑を否認していましたが、調査より京都府立医大病院の吉川学長が暴力団組長との交際があったことが指摘されるようになりました。
飲食店で組長と接触したことは「偶然」と主張していましたが、学内の評議会は解任を求める手続きを進めているところでした。最終的には吉川学長が体調不調を理由に2017年3月末に退任する意向を示しました。
今回の騒動では、地域の中核となる公立病院で暴力団との繋がりが疑われるという事態になりました。暴力団と繋がりがあるという時点で、それが明るみになれば人々からの信頼は揺らいでしまうでしょう。
多くの医師は誠実に仕事をしていきたいと考えていますが、今回診断書を作成した担当医のように、院長の指示で事実とは異なる情報を記載してしまう医師もいます。自分に限ってそのようなことはありえないと思っていても、環境に流されて不適切な行動をとってしまうことのないよう肝に銘じる必要があります。
近年は医療現場が反社会的勢力のターゲットにされ、生活保護受給者の受診を斡旋するなど医療機関と何らかの関係性を持とうとするケースが増えているようです。これは大規模な公立病院だけでなく、民間の小さなクリニックであっても注意が必要です。
地位や金銭に目を眩まさず、倫理に反するようなことはしないで診療に当たることを今一度心に刻みましょう。
今回の騒動では、世間から見れば明らかに組織で暴力団との繋がりがあったと見てとれますが、当事者は最後まで潔白を主張していました。
初めから倫理に反するような行動に及ばないことはもちろんですが、言い逃れをしてばかりいることも潔さに欠けるといえます。
倫理観を忘れず日々の診療に当たりましょう。