近年、女性医師の数は増加してきています。
米・ハーバード大学の調査より、男性と比べて女性の内科医では診療した患者の死亡率が低くなることが示されました。
女性医師が診療すると死亡率が下がる現象は、どんな要因によって起こるのか興味を持たれる方は多いのではないでしょうか。この記事ではハーバード大学の調査についてまとめています。
米・ハーバード大学の研究グループは、内科において男性医師と女性医師で診療した患者の経過に違いがあるかを分析し、同大学の津川友介研究員らが結果をまとめました。
この調査では、米国で2011〜2014年に入院した65歳以上の患者を対象とし、150万人近くの患者のカルテ等を分析するという根気のいる作業を行っています。なお、この調査では、約5万8000人もの内科医が対象となる、大規模なものとなりました。
膨大なデータを取りまとめ分析した結果、担当する医師の性別によって、患者の経過に違いが生じ、女性医師が担当した方が死亡率が低くなることが示されたのです。
これは、近年女性医師が増加している日本の医療現場にとっても興味深い事実でしょう。
今回の調査では、入院から30日以内に亡くなった患者の割合を分析しました。
その結果、女性医師が診療した患者の死亡率は11.07%であるのに対し、男性医師の患者では11.49%という結果になりました。これはわずかな違いのように見えますが、もし男性医師が診療した患者の死亡率が、女性医師の患者と同じ水準まで下がると、アメリカにおいては65歳以上の患者の死亡数を1年で3万2000人減少させることができることになります。
また、死亡率だけでなく、退院後30日以内に再入院する患者の割合も調査しています。
こちらも同様に、女性医師が担当している患者の方が少ないという結果になりました。これらの結果から、女性医師の患者の方が死亡率も再入院する率も低いということが言えるのです。
男性医師と比べ、女性医師が担当した患者の方が経過が良くなるという現象は、どのような要因によって生じるのでしょうか。
女性の診療の仕方に何か良い作用をもたらす特徴があるのなら、可能な範囲で男性医師も取り入れたいと考えるでしょう。
この研究では、女性医師が治療を進める際の特徴として、"診療ガイドライン"に沿って診療を行うなど、男性と比べて慎重に対応していることが要因なのではないかと考えています。
もちろん個人差はあるので一概には言えませんが、全体を見てみると女性の方が細かなところまで注意しながら、根拠に基づいて治療を進めている可能性があります。
ここまで見てきたように、女性医師が担当した患者の死亡率・再入院率の低さの要因として、女性の「慎重さ」が該当する可能性があります。
今回の調査はアメリカで行われたものではありますが、医師の性別によって経過が異なるという事実は興味深い結果と言えるでしょう。
日々の臨床の中で、ガイドラインは既にある程度頭に入っているという医師が大半かとは思いますが、その上で経験的に判断することも少なくないでしょう。研究や調査でわかることはごくわずかであり、実際には経験や勘が頼りになることも多いです。
教科書的な経過を辿らない患者も少なくありません。しかし、より"エビデンスに基づいた医療"を展開するためには、今一度ガイドラインを意識して緻密に診療に当たることも方法と言えるかもしれません。
![]() |
人気テレビドラマ「ドクターX」の影響もあるのか、小学生の女の子が憧れる職業ランキング1位には医師がランクインしています。 子供が憧れる職業として女性医師の人気が高まってきていますが、実際に国内外において女性医師は増加傾向にあります。 |