近年急増する"モンスターペイシェント"の存在を、心のどこかで気にしながら臨床業務に当たっている医師も少なくないのではないでしょうか。
稀に遭遇するモラルがない患者の対応をすると疲弊してしまうものですが、この記事でご紹介するポイントを参考に対応していきましょう。
モンスターペイシェントといえば、病院や医療従事者に対して理不尽な要求をする患者のこと。
もともと「モンスター」という言葉は学校で理不尽な要求をする「モンスターペアレント」にも使われていましたが、医療機関を利用する患者の中にもそうした類の人がいるのです。理不尽な要求をして、最終的には暴言や暴力に至ることもあります。
モンスターペイシェントは単に無理な要求をするだけでなく、物を投げつける・蹴る・殴るなどの暴力的な行為に及ぶケースも存在し、ひどい場合になると刃物を突きつけるなど危険な行動をとることもあります。
実際、2017年1月には歯科医院の男性院長が治療に不満を持った患者に刺殺される事件も起こりました。女性の医療従事者の場合は恐怖を感じて応援を呼ぶなどの行動に至りやすいですが、男性の場合は「自分で抑えられるだろう」と過信してしまいがちです。
男性医師の場合でも、暴力行為に至るモンスターペイシェントに遭遇した場合には、人目のあるところで他のスタッフを呼んで対処するようにしましょう。重大な事件に発展することのないよう「ただ暴れている人」と甘く見ずに、まずは暴力から自分の身を守ることが先決です。
モンスターペイシェントと呼ばれる人々は理不尽に強い主張をします。中には険しい形相で怒鳴りつけてくる患者もいますが、そうした人は感情的になっているため、理屈が通用しない場合も多いです。まずは穏やかに話を聞いて、共感することを基本的な姿勢とすることが望ましいでしょう。
怒鳴るという方法は適応的ではありませんが、人がそれほどまでに怒っているのには何か理由があるはずです。じっくり主張に耳を傾けて共感するだけで落ち着く患者もいます。
モンスターペイシェントが理不尽な主張をしていれば、「いや、それはこうだったからであって......」とつい訂正したくなりますよね。怒鳴られているときに黙って話を聞くというのは意外と難しく、つい途中で話を遮ったり、意見を挟んでしまいがちです。
そうした気持ちをグッと抑え、まずは「なるほど」と穏やかに話を聞くことがポイントになるでしょう。
モンスターペイシェントに遭遇したとき、よくよく話を聞いてみると場合によっては明らかに医療スタッフ側に過失があることもあるかもしれません。そうした場合には、誠意を込めて謝罪しなければいけないケースもあるでしょう。
しかし、そもそもモンスターペイシェントの特徴は「理不尽な要求・主張」をすることにあります。正当な理由がないのに、一方的に理不尽な要求を突きつける傾向にあるのです。
そのため、怒っているからといって謝罪してしまうと「非を認めた」と捉えられてしまいます。医療スタッフが「謝る」=「非を認める」というように認識され、さらに要求がエスカレートする可能性もあります。
もともとモンスターペイシェントは自分が間違っていると思っていませんが、病院側が謝罪することで、それがますます確信に変わることも起こりえるでしょう。
明らかに医療スタッフに落ち度がない場合には、共感するまでに止めておき、謝罪はしないように一線を引くと良いでしょう。
モンスターペイシェントに遭遇すると、傾聴・共感が基本と頭ではわかっていても、つい話を遮ってしまいたくなるものです。
そうした気持ちを抑え、仕事のうちと思って冷静に対処していくことが望ましいでしょう。また、危険な暴力行為があったときは自分の安全を守ることを優先しましょう。