人工知能(AI)を医療の現場で活用するために、世界中で様々な開発が行われています。中でも2017年1月に科学誌「Nature」に掲載された報告が注目を集めています。
2017年1月、スタンフォード大学の研究グループが「ディープラーニング(深層学習)」を使って画像データから皮膚がんを判定する精度が医師並みであったことを報告しました。
この報告は英科学誌の「Nature」に掲載され、世界中にインパクトを与えました。この研究チームは、スマートフォンなどを用いた日常的な皮膚がんのスクリーニングにおいて、ディープラーニングの技術を応用したい考えを示しています。
そもそもディープラーニングという技術は、特に画像分野で発展を遂げてきました。アメリカの大手企業が開発したアルゴリズムを応用しており、画像に関する情報を学習させることで、機械が識別する能力を高めていきます。
同じAIでも、従来の機械学習では人間がどのような特徴に基づいて識別を行うかを定義する必要があり、複雑な特徴を表現できないという問題がありましたが、ディープラーニングでは人工知能がすでに学習したデータから特徴を自動的に抽出してくれるというメリットがあります。
そのテクノロジーは高度な発展を遂げてきており、画像診断などの領域において導入される日もそう遠くないでしょう。
スタンフォード大学の研究では、128 万件の画像を学習させたディープラーニングのアルゴリズムを用いて、機械が画像を識別できるようにしました。例えば、犬と猫の画像データを大量に学習させて、別のある1つの画像データについて「犬」なのか「猫」なのか機械が区別することができるといった具合です。
これを皮膚の画像に置き換えて考え、「カルチノーマ」「メラノーマ」「良性腫瘍」の識別に応用させることが、今回のディープラーニングの応用に関わる研究の概要です。この研究では、生検で確定診断がついた症例の写真を利用し、「カルチノーマ」「メラノーマ」「良性腫瘍」といった皮膚病変の画像を大量に学習させました。そして、AIによる識別結果と、皮膚科医の診断結果と照らし合わせるという方法で研究を進めています。
もしAIと医師の判断が一致していれば、AIが診断領域において実用化される可能性が高まることになります。
今回の研究では、ディープラーニングによるアルゴリズムを用いた画像データの識別結果と、21名の皮膚科医による画像判定の結果は、大きく一致していることが明らかとなりました。感度特異度曲線91%以上の領域において一致することが示され、これはAIによる画像診断の結果が医師と同等の精度であったことを意味しています。
医療においてAIが導入される可能性には様々なものがありますが、その中でも画像診断においては特に強みを発揮することになるでしょう。また、こうしたアルゴリズムはスマートフォンに実装することもそれほど高度な技術は要さず、十分に実現可能であると言われています。
まだ研究段階ではあり、実用化されるレベルになるにはもう少し月日を要する可能性もありますが、ディープラーニングのようなAIに関する技術が医療の場で活用される日もそう遠くないかもしれません。将来的には、医師の診断をサポートしてくれる重要なツールとなることでしょう。
AIの技術は発展を続け、研究報告がインパクトファクターの高い「Nature」にも掲載されるなど、いよいよ実用化に向けて動いていることが実感できます。
実際に画像診断も医師並みの精度になってきており、診断を補助するツールになる日も近いでしょう。
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