開業医の後継になるというと、同じ世代の医師からも羨望の眼差しで見られることがあります。しかし、実際には親子で摩擦が生じるケースも少なくないとされ、スムーズに病院を継ぐことができない場合もあるのです。
m3.comが実施した調査では、開業医を対象に「引退後の後継者」に関する質問を行いました。クリニックの後継者について、「決まっている(身内)」「決まっている(身内以外)」「決まっていない」「継承する予定はない」の4つの答えで回答を得ました。198人の開業医が回答した結果、約半数は「決まっていない」と答え、17%は身内が後継者となる予定としています。開業医といえば身内が後継をするイメージがありますが、実際にそうした例は少数派であることが窺えます。「継承の予定はない」と回答した割合は28%と一定数いますが、こうした医師は自分の代でクリニックのローンも返済し終える見込みなのでしょう。しかし、大半の医師は自分が作ったクリニックを世に残したいと思うのです。通ってきてくれる患者がいて、自分が作ったクリニックで人々の健康を支えることができるのなら、後世につないでいきたいと考えるのが自然でしょう。 【参照元:https://www.m3.com/news/iryoishin/490376(m3.com)】
開業したクリニックを子供に継承させようとするときは、親子であれば何の問題もなくスムーズに継承させることができるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。しかし、実際には親子間でクリニックを継承する際にはいくつかの問題が生じることがあり、一筋縄ではいかないことも多いです。 まずは、親子で専門の診療科目が異なれば、そこには問題が出てくることになります。初めから子供が後継ということが決まっており、親子でその意志が共有されていたのであれば、子供は専門の診療科を親と同じにするでしょう。しかし、子供が後継になるということを明確に共有していなかった場合には、子供が医師になったときに親とは違う診療科を選択する可能性もあります。また、40代・50代から開業する医師も少なくありませんが、子供が医師として他の診療科で活躍しているときに、親が自分の専門領域のクリニックを開業するケースもあるでしょう。そのようにして、親子で診療科が異なるという事態に直面することはしばしば起こり得ます。診療科が違えばその時点で通っている患者も入れ替わりが生じ、さらに医療機器も一新しなければならないなど設備投資も出てきます。既にクリニックのローンを返済していればまだ余裕がありますが、継承後も返済を続ける場合には大きな負担となってしまうのです。
普段、他愛もない話をしている分にはそれほどの摩擦がなくても、仕事となると考え方や意見の食い違いが出てくるケースもあります。親が高齢であれば従来のやり方を好み、それほど変化や改革を好まない傾向にあることでしょう。若い人はエネルギーが豊富にあり、新しいものをどんどん取り入れていこうとします。 これは開業したクリニックの継承だけでなく、個人事業主や会社経営者であっても、親から子へ受け継ぐ際にはそれなりの摩擦が生じることがあります。実際に大手家具メーカー「大塚家具」では、父と娘が意見の対立から経営権を争うことになり、最終的に娘が勝利して社長に就任したものの赤字に陥っています。 親子で摩擦が生じるケースがあることは想定しておき、初めのうちはこれまで通りの慣習に従い、正式に後継になった時点で徐々に新しいやり方にシフトしていくことが望ましいでしょう。
開業したクリニックを親から子へ受け継ぐ際、スムーズにいかないケースもあることは念頭に置いておきましょう。初めのうち、継承者は口を出しすぎず修行させてもらうような姿勢で臨むことが円満の秘訣です。