心療内科や精神科の医師は、他の診療科とは違った苦労やジレンマを経験することが多いのではないでしょうか。 近年増加している現代型うつ病など病態も多様化する中で医師が感じるジレンマにフォーカスしていきます。
近年増え続ける、いわゆる「現代型うつ病」は、社会的にも注目を集めています。従来のうつ病にかかりやすい性格特徴とは全く正反対のタイプの非定型うつ病であり、精神科や心療内科における診療においては戸惑うこともあるのではないでしょうか。
医師に発行してもらった診断書を職場に提出し、休職中であっても遊びや旅行には行ける患者。そしてそのエピソードを誇らしげに話す患者の治療にはジレンマを感じることも多いでしょう。
基本的に従来のうつ病とは治療の仕方が異なるため薬物療法は不要であり、もし薬を使うとしても対症療法として位置付けられます。治療の方針としては患者の話に対して共感・傾聴し、場合によっては患者の働き方について企業と話し合いを持つこともあるでしょう。
実際、職場におけるメンタルヘルスを環境的な側面から検討していく試みは近年のトピックでもあります。心理面・環境面へのアプローチが治療の一環という反面、病識が乏しく他責的な患者と接する中でもどかしさを感じる医師も多いのではないでしょうか。
精神科や心療内科では、できることならじっくり患者と向き合いたいと考える医師が多いでしょう。他の診療科が5分、あるいはそれ以下で手早く診察を終えるケースが多くても、心療内科や精神科では同じようにいきません。
ただ、現在の医療制度では大量の患者を診なければ経営が成り立たない仕組みになっており、一人あたりに割ける時間が短いことにジレンマを抱える人もいるでしょう。
今注目を集めている現代型うつ病では、軽い躁状態になってやや活発になっていることがあります。ただ、これが元々の特徴なのか、軽躁なのかを医師が判断することは非常に難しいとされています。
特に外来で時々顔を合わせなければならない程度であれば、患者の言動から得られる情報も少なく診断を正確に行うことは困難なのです。現代型うつ病では治療も難しいですが、診断自体も正しく行うことが難しくジレンマを感じることも多いでしょう。
若年のうちに統合失調症や人格障害などを発症し、その後も病院が生活の場のようになっている患者も少なくありません。入院が長期化して40代、50代、60代と年齢を重ねていくと次第に頼れる身寄りもいなくなり、社会と離れている時間が長いほど再就労も現実的に困難になっていきます。
入院が長期的に経過すると社会復帰に対する自信が低下したり、外での暮らしに対して漠然とした不安感を抱えることも少なくありません。社会復帰も実現が難しくなり、いわゆる社会的入院を続けている人が少ないないことが実情です。
先進国では精神科の在院日数は20日ほどが目安といわれており、すぐに地域に戻って生活することが当然になっています。コミュニティの中で必要な支援を受けながら生活する仕組みが確立されており、患者の社会復帰や自立を促すことはもちろん、医療費の削減にも貢献します。日本では長期入院をする精神科患者が多く、「本当にこれで良いのだろうか」とジレンマを感じることもあるでしょう。
心療内科や精神科で勤める医師は、日々の診療においてジレンマを感じる場面もあるのではないでしょうか。もちろん患者の病状が落ち着いて社会復帰できた日には喜びややりがいも感じられますが、時にはもどかしさを感じることもあるでしょう。
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