医師の患者に対する暴言や暴力、嫌がらせなどを揶揄する言葉として「ドクターハラスメント」という造語が存在するのをご存知でしょうか。
今回は、医師として知っておきたいドクターハラスメントの定義や気をつけたいポイントをご紹介していきます。
ドクターハラスメントとは、2002年に土屋繁裕医師が著書 『ドクターハラスメント - 許せない!患者を傷つける医師のひと言』の中で用いた造語であり、「ドクハラ」と略して使うこともあります。
具体的には、医師の患者に対する暴言や暴力、嫌がらせなどを含み、患者が不快に感じるような場合にはドクターハラスメントとして扱われます。
医師だけでなく、看護師などの医療従事者が同じようにして患者を不快にさせるとハラスメントとして認識されます。近年、ハラスメントという表現の中には場面や状況に応じて、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメント、アルコールハラスメントなど、様々なタイプに分類されるようになりました。
そもそもハラスメントとは直訳すると「嫌がらせ、人を困らせること」といった意味があります。言葉を発した人の意図とは関係なく、相手が不快感・驚異などを感じ、尊厳を傷つけられたと感じたときにはハラスメントの定義に当てはまることになります。
普段発している"何気ない言葉"がハラスメントになっている可能性もゼロではなく、医師の方もドクターハラスメントをしていないか注意する必要があります。
ドクターハラスメントは自身が自覚していなくても、患者にとって暴言・言葉の暴力として感じられることがあります。
例えば「黙って指示に従え」といったような態度をとったりと、患者に対して高圧的な態度をとってしまうことが挙げられます。治療方針をめぐって患者と意見が対立したときなど、最終的にその人の人格まで否定するようなことを言ってしまえば言葉の暴力になってしまう可能性があります。
基本的な医師の注意義務としては、適切に問診し、療養指導を行っていくことが求められますが、ある一線を越えてしまうとハラスメントの範囲に該当してしまいます。
「そんな性格や考え方では治るわけがない」など発言が患者の人格を否定するような域に及んでいるときには「ドクターハラスメント」となってしまう可能性が高いため、発言には注意する必要があります。
平成23年10月には、ある産業医が自律神経失調症により休職している患者との面談において、「それは病気やない、それは甘えなんや」と言葉をかけ、「薬を飲まずに頑張れ」と励ましました。
この産業医は単に励ましたかっただけなのかもしれませんが、「こんな状態が続いとったら生きとってもおもんないやろが」といった発言の数々が「注意義務違反」に問われました。
結果、患者の症状が悪化したために休業損害・慰謝料の賠償が必要となった事例です。本人が良かれと思っていても、患者にとってそれが不快であれば言葉の暴力とみなされ、「ドクターハラスメント」に該当してしまうことがあるのです。
時代とともに人権や尊厳に対する意識が高まってきているため、こうした発言をしてしまったときには慰謝料の賠償など金銭的に負担が発生するだけでなく、医師の立場としても信頼を失うことにつながりかねません。
医師として無意識的に発した何気ない言葉が、患者を不快にさせてしまう可能性もあります。
患者に注意し、治療上の指導を行うことが業務の範囲でありますが、その際に人格までも否定してしまうような言葉の暴力・暴言がないように注意しておきたいところです。
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