2015年より、看護師が研修を受ければ医療における特定行為を実施できるようになりました。
まだまだ始まったばかりの制度ですが、今回は新しい制度の概要や実施できる特定行為の種類、期待できることについてまとめていきます。
2014年に「特定行為に係る看護師の研修制度」が設置され、翌年3月には制度が施行されました。この制度では、医師・歯科医師があらかじめ患者を特定した上で、看護師が手順書に従って特定行為を行うことを指示できるようになります。
2025年に向けて、さらなる在宅医療等の推進を図っていくためには、個別に熟練した看護師のみでは足りず、医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助(例えば脱水時の点滴(脱水の程度の判断と輸液による補正)など)を行う看護師を養成し、確保していく必要があります。
このため、その行為を特定し、手順書によりそれを実施する場合の研修制度を創設し、その内容を標準化することにより、今後の在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成していくことが、本制度創設の目的です。
【制度の対象となる場合の診療の補助行為実施の流れ】
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現行と同様、医師又は歯科医師の指示の下に、手順書によらないで看護師が特定行為を行うことに制限は生じません。
本制度を導入した場合でも、患者の病状や看護師の能力を勘案し、医師又は歯科医師が直接対応するか、どのような指示により看護師に診療の補助を行わせるかの判断は医師又は歯科医師が行うことに変わりはありません。
引用元:厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度の概要」
この制度が開始された背景としては、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて、在宅医療を推進していくという目標が掲げられています。
2015年の10月には研修制度もスタートし、看護師がこの研修を受けることで特定行為が実施できるようになりました。看護師の役割が広がることで、医師の業務内容や医療現場のあり方が変わる可能性があり、動向が注目されています。
まだ制度が始まってそれほど時間が経過していないため、これからどのように活用されていくのか期待が高まります。
特定行為を実施できるようになるために看護師が受けるべき研修は、臨床病態生理学や医療安全学、特定行為実践といった共通科目を315時間受ける必要があります。
その他には、区分別科目と呼ばれる、特定行為の区分ごとの研修が必要になります。研修は指定研修機関で受けることとなり、1〜2つ以上の特定行為区分に係わる研修を行うことができる学校や病院で実施するとされています。
2015年に出された厚生労働省令第33号によると、研修を受けた看護師が実際にできるようになる特定行為には様々なものがあります。
例えば、呼吸器関連であれば気管チューブの位置調整、気管カニューレの交換などであり、循環器関連であれば一時的なペースメーカーの操作などを行うことができます。その他、薬剤の投与に関しても抗けいれん剤、抗精神薬の投与やインスリン、カテコラミン、降圧剤等の投与量の調整を行うことができます。
いずれも緊急性がある状況が想定されており、医師が用意した「手順書」に基づき看護師が処置できるとされています。これまで医師が直接行わなければならなかった処置を、手順書があれば看護師も実施できるようになるため、業務の効率化が図られるでしょう。
看護師によるこれらの処置が実際に行われる現場としては、在宅医療をはじめ急性期のフィールドが想定されています。
日本では医師不足が深刻です。医師の絶対数の不足、地域や診療科による医師の偏在によって、医師の業務量は大きくなっています。
それを打開できる可能性のある対策としては、コメディカルへの業務の分散が挙げられます。他にも医師不足を解消するためには多角的にアプローチする必要がありますが、その中でもコメディカルへの業務の分散は重要な位置付けとなるでしょう。
看護師がある程度の長さの研修を受ける必要があるため、すぐに普及するとは限りませんが、スキルアップを目指す看護師が増えていくことが期待されます。特定行為に係る看護師の研修制度の導入によって看護師の役割が拡大し、過剰な医師の業務を減らすことができる可能性があります。
今後は「特定行為に係る看護師の研修制度」の導入によって看護師の役割が拡大し、医師の負担も軽減していくことが予想されます。
こういったことにより、医師不足に起因するマンパワー不足を解決する糸口になることが期待されます。
他の対策と組み合わせて医療の効率化や業務の分散を図っていくことが望ましいでしょう。