治療を進めていく上で、医師と患者の信頼関係は欠かすことができないものです。
治療を適切に進め、患者のニーズに応えていくことももちろん重要ですが、患者との信頼関係、いわゆるラポールを築いていくためのコツを「心理学的な側面」からお伝えしていきます。
「ペーシング」とは、相手のテンポや話し方といったその人のペースに合わせて接するテクニックです。
心理学の世界では、相手の話し方を真似る方法として用いられています。例えば、ゆっくり話す患者にはゆっくりと話し、逆に早口な患者にはこちらも早口に話すということがわかりやすい例です。
例えば、話すスピードがゆっくりとしている高齢者が相手の場合には、無意識にこちらもスローテンポで話をすることがあります。そのように、相手に合わせて無意識的にペーシングを行っている医療従事者も多いですが、相手の話を引き出しやすくなるというメリットがあるでしょう。
患者としても、自分の訴えをよく聞いてもらえたという満足感を得ることにつながるため、結果的に医療に対する満足度も高まり、信頼関係も築きやすくなるといえるでしょう。
バックトラッキングとは、相手の発言を聞き手が繰り返すことで、傾聴する姿勢・受け止める姿勢を示す手法のことです。
いわゆるオウム返しのことですが、すべて復唱すると当然違和感が出てくるため、少し言葉を置き換えて内容を要約するようにして繰り返すことが有効です。そうすることで患者は自分の訴えやニーズを理解してもらえたという確認につながるので、安心感が高まるでしょう。
患者としては、受診にあたりどうやって自分の症状や置かれた状況を伝えようか、多かれ少なかれイメージや準備をしてくるものです。自分が伝えたかったことが本当に伝わったかどうかを確認できる手続きがバックトラッキングといえるでしょう。
言葉を繰り返す作業は時間をとってしまうため、日々の臨床で丁寧に行うことは難しいかもしれませんが、全てのやりとりについてバックトラッキングを行うのではなく、重要なワードや訴えについては行ってみると良いでしょう。
キャリブレーションとは、相手のしぐさや姿勢、呼吸など心理状態が現れるポイントを観察する手法のことを指します。もちろん、医師は患者の様子を日々観察しているので釈迦に説法にはなってしまいますが、病態や症状というよりは心理状態の観察に着目した考え方になります。
患者が今どんな心理状態なのかを考えることで、患者の気持ちに寄り添った治療を展開していくことができるでしょう。多くの病院では電子カルテ化が進められており、医師がコンピューターと向き合う時間も増えました。症状だけチェックして、患者とは目も合わせずにコンピューターと向かい合っていると、患者としては当然心理的な満足が得られません。
何気ないことではありますが、医療従事者の些細な雰囲気や態度から受ける印象は大きいのです。
患者と信頼関係を築く上では、「きちんとあなたの気持ちやニーズを受け止めました」ということがどのような形であれ伝えられることが重要といえるでしょう。
医療訴訟やトラブルなども絶えない領域ではありますが、患者との信頼関係ができていればそういったリスクも下げることも可能です。
医師が患者と信頼関係を築く上で使える、ラポール形成のテクニックについてご紹介しました。
どれも実際の治療や処置とは直接関係ないように思えますが、継続してかかりたいと思える医師・病院であるためには信頼関係の構築は必須になります。
日々の臨床で使えそうなテクニックがあれば、取り入れてみることも有効でしょう。
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