日本人といえば世界的にも「勤勉」というイメージをもたれています。
しかし、日本の労働生産性は他の先進国と比較して低いということが知られています。勤勉であるのに、なぜ労働生産性が低いのでしょうか?
今回はその理由を探っていきます。
日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国のうち、7カ国中で最下位とされています。日本人は真面目で勤勉であり、それを強みに長い歴史の中で経済の基盤を築いてきました。
ところが時代とともに様々な技術や経済が発展し、各国において仕事や生活のあり方も移り変わってきています。
日本の労働生産性が低い背景には、終身雇用制が当たり前でなくなったことや非正規雇用の増加といった要因も考えられるでしょう。様々な要因があるため、"なぜ日本の労働生産性が低いのか"、特定の要因を限定することは難しいです。
しかし、少なくともただ頑張るだけでは諸外国と同じだけの生産性をキープできなくなってきたということはいえるのではないでしょうか。
日本人の価値観として、"勤勉であること"を評価する風潮があります。
海外の人が結果重視で合理的な考え方をするのに対し、日本人は努力といったプロセスに重きをおく傾向があります。また、病院だけでなく一般企業においても、全体的に残業が当たり前のような勤務スタイルが根付いています。
仕事の契約時間が午後5時までだったとして、定時に帰ることは本来権利として認められるべきですが、周囲からの評価は落ちてしまうという雰囲気を味わった方もいらっしゃるでしょう。特に日本人は忍耐して勤勉であることが美しいという価値観を持っている傾向にあり、それに応えようとする分、仕事へのウエイトが大きくなります。
また、若い働き手は残業代を稼ぎたいために、意図的に仕事を増やしたり、集中力も切れているのに残業するといった事態が生じています。
長く職場に居ればそれだけ成果があげられるかというと必ずしもそうではなく、ある程度「結果重視」の風潮も重要視されるべきといえるでしょう。
日本人は仕事が丁寧で、メイドインジャパンの製品も世界中で親しまれていますが、仕事や作業の効率性という点では疎いところがあります。
例えば、医療関係の学会にしても、スマートフォンやタブレット端末の普及とともに、海外では早い段階から抄録集をアプリ上で見ることができるように効率化が図られていました。
最近は日本でも学会の抄録をアプリで参照できるようになってきていますが、多くのケースで海外がテクノロジーを実用化するスピードよりは、一歩出遅れることが多いです。そこには英語から日本語に翻訳されて、テクノロジーが輸入されるまでに時間がかかってしまうという要因もあるでしょう。
しかし、それ以上に効率的なツールややり方を積極的に取り入れるという姿勢に乏しいのかもしれません。例えば、インターネットを介したビデオ会議やクラウド上でのデータ共有など便利な方法は多くありますが、律儀で丁寧な日本人は直接会ってミーティングをしたり、書類を郵送したりといった手続きを重んじる傾向にあります。
テクノロジーを利用して効率化を図るという意識付けが諸外国と比べて乏しいことも労働生産性を下げる要因となっている可能性が考えられます。
かつての日本は勤勉さや仕事の丁寧さを武器に発展を続けてきました。
ところが、世界の経済が発展する中で、労働生産性は諸外国と少しずつ差が開いてきてしまったのです。医療においても該当する部分があるので、「効率的な業務」を模索していくことが鍵となるでしょう。