近年、時間外診療の増加が目立ち、救急の現場で働く医師は日々ハードな労働を強いられています。各自治体でもこの事態を問題視し、時間外診療や救急センターをコンビニ感覚で利用しないよう呼びかけています。
今回はコンビニ感覚で利用する時間外診療の増加について事例を含めてご紹介します。
休日や夜間といった外来での診療を行っていない時間帯に救急外来を受診するケースが増え、いわゆる「コンビニ受診」として問題になっています。
時間外診療を使ったコンビニ受診では、8割〜9割が軽症患者と報告している自治体もあり、本当に治療が必要な人の処置が遅れることから問題視されています。
現代人はライフスタイルの変化で帰宅時間が遅くて受診できない、受診するための休みが確保できないなど様々な理由でコンビニ受診は増加しています。
本来ならば緊急時に利用する場ですが、私的な理由や都合から時間外診療や救急を利用する患者が増えているのです。
救急の現場で働く医師にとっては重篤患者への対応が遅れることにも繋がるため問題と感じていても、現実的に状況をすぐに改善することは難しいようです。
時間外診療や救急外来のコンビニ化といった問題を解決するための手段として、24時間電話で相談可能なコールセンターを設置している自治体も多いです。
看護師などの資格を持った人が電話で相談にあたり、救急を受診すべきか、あるいはもう少し様子を見るべきかなどをアドバイスしてくれます。
こういったコールセンターの管理にもコストはかかりますが、それ以上に救急外来の軽症患者の利用は医療を圧迫しているのです。まずは電話で相談してから、時間外診療・救急を利用すべきかどうかを考えることができるため、ここである程度の軽症患者を振るいにかけることができるというわけです。
症状が重くないことを自覚していながらも日中に病院へ行けないという理由で意図的に受診する人もいますが、病気に関する知識がない一般人は「明日まで待って大丈夫だろうか?」と過剰に不安になってしまうことも当然あります。
そんなときに電話で相談に応じてもらえるサポートは、時間外診療の増加を抑制するために貢献するでしょう。
時間外診療の増加に対して、抑制に成功したケースも存在します。
中部エリアで救急医療を展開していた4つの病院は、コンビニ受診によってパンク寸前の事態となっていました。4つの病院で足並みを揃え、2008年に「時間外加算の自費徴収」を行い、結果として軽症患者の救急利用を抑制することに成功しました。
時間外診療における患者が自己負担する加算額は、22:00以降の深夜になると初診時4,800円、再診時4,200円と設定して、金銭的な部分で負担を課すように対応したのです。
さらに、軽症であった場合には特定初診料として2,100円を加算することとしました。その結果、軽症患者のコンビニ受診の抑制に成功し、新聞でも取り上げられました。
この方法は結果として軽症患者の抑制に成功したのですが、お金のある人は躊躇なく時間外診療を受けられる仕組みなので不平等だと感じる人もいるかもしれません。
一番即効性のある方法が自費徴収を行うというやり方であったのだと考えられますが、確かに経済的な格差によって受けられる医療に差が出ることには反対する人もいることでしょう。経済的な負担にかかわらず、個人的な理由でコンビニ受診をしないなど最終的には患者としてのモラルが求められるでしょう。
各地域の救急医療が崩壊することのないよう、また限られた数の医師を守っていくよう、時間外診療の増加への対応は急務です。
軽症患者の抑制に成功した事例にならい、各地域でも何らかの対策を行うことが急がれます。