日本の医師は多忙なイメージがありますが、諸外国の水準と比べるとどうなのでしょうか。
オーバーワークはうつ病や過労死を引き起こす可能性もあり、ワークライフバランスを保っていくことが必要になります。
今回は医師の業務量について、その実態と対策についてご紹介していきます。
医師や看護師が病院で忙しそうに働く姿を見て、「医療職は多忙」というイメージを持っている人は多いです。実際に病院で医療スタッフに声をかけたくても、あまりに忙しそうなので気が引けるという経験をする患者も多いようです。
特に高齢の患者であれば遠慮してしまい、言いたいことがあっても我慢していることも珍しくありません。医師は超過勤務も当たり前のように行っていますが、なぜこのように医師の業務量は多くなっているのでしょうか。
日本では医師不足が深刻な問題として叫ばれていますが、他の先進国と比べて人口あたりの医師の数が少ないという特徴があります。
さらに国内総生産(GDP)に対する医療費の割合も少なく、人件費も含めて国があまり多くのお金を医療に使っていないことがうかがえます。
端的に表すと、日本の医師はそもそもの数が少ないにもかかわらず、少ない予算で過剰労働を迫られている現状といえます。そうなると必然的に医師の仕事はハードなものとなっていくでしょう。
順位 | 国 | 医師数 |
1 | キューバ | 6.7 |
2 | ギリシャ | 6.2 |
3 | スペイン | 4.9 |
4 | ベルギー | 4.9 |
5 | オーストリア | 4.8 |
6 | ノルウェー | 4.3 |
7 | ロシア | 4.3 |
8 | ポルトガル | 4.1 |
9 | スイス | 4.0 |
10 | アルゼンチン | 3.9 |
11 | スウェーデン | 3.9 |
12 | ドイツ | 3.9 |
13 | ブルガリア | 3.9 |
14 | ベラルーシ | 3.9 |
15 | イタリア | 3.8 |
16 | ウルグアイ | 3.7 |
17 | カザフスタン | 3.6 |
18 | チェコ | 3.6 |
19 | ウクライナ | 3.5 |
20 | デンマーク | 3.5 |
21 | イスラエル | 3.3 |
22 | オーストラリア | 3.3 |
23 | レバノン | 3.2 |
24 | フランス | 3.2 |
25 | ハンガリー | 3.1 |
26 | クロアチア | 3.0 |
27 | オランダ | 2.9 |
28 | フィンランド | 2.9 |
29 | モンゴル | 2.8 |
30 | イギリス | 2.8 |
31 | エジプト | 2.8 |
32 | クウェート | 2.7 |
33 | アイルランド | 2.7 |
34 | ニュージーランド | 2.7 |
35 | ヨルダン | 2.6 |
36 | アラブ首長国連邦 | 2.5 |
37 | サウジアラビア | 2.5 |
38 | アメリカ合衆国 | 2.5 |
39 | スロベニア | 2.5 |
40 | オマーン | 2.4 |
41 | ルーマニア | 2.4 |
42 | 日本 | 2.3 |
43 | ポーランド | 2.2 |
44 | 韓国 | 2.1 |
45 | カナダ | 2.1 |
46 | メキシコ | 2.1 |
47 | セルビア | 2.1 |
48 | シンガポール | 2.0 |
49 | 中国 | 1.9 |
50 | ブラジル | 1.9 |
51 | トルコ | 1.7 |
52 | パナマ | 1.7 |
53 | エクアドル | 1.7 |
54 | エルサルバドル | 1.6 |
55 | シリア | 1.5 |
56 | ドミニカ共和国 | 1.5 |
57 | コロンビア | 1.5 |
58 | ベトナム | 1.2 |
59 | マレーシア | 1.2 |
60 | トリニダード・トバゴ | 1.2 |
61 | アルジェリア | 1.2 |
62 | チュニジア | 1.2 |
63 | コスタリカ | 1.1 |
64 | ペルー | 1.1 |
65 | チリ | 1.0 |
66 | イラン | 0.9 |
67 | グアテマラ | 0.9 |
68 | パキスタン | 0.8 |
69 | 南アフリカ | 0.8 |
70 | インド | 0.7 |
71 | スリランカ | 0.7 |
72 | イラク | 0.6 |
73 | ミャンマー | 0.6 |
74 | モロッコ | 0.6 |
75 | タイ | 0.4 |
76 | バングラデシュ | 0.4 |
77 | ジャマイカ | 0.4 |
78 | ナイジェリア | 0.4 |
79 | イエメン | 0.2 |
80 | インドネシア | 0.2 |
81 | カンボジア | 0.2 |
82 | ケニア | 0.2 |
83 | ザンビア | 0.2 |
84 | ウガンダ | 0.1 |
85 | ガーナ | 0.1 |
86 | パプアニューギニア | 0.1 |
87 | エチオピア | 0.0 |
88 | タンザニア | 0.0 |
89 | マラウイ | 0.0 |
90 | フィリピン | ... |
91 | ホンジュラス | ... |
92 | ベネズエラ | ... |
93 | コンゴ民主共和国 | ... |
近年は医師の仕事の中で患者にしっかりと説明を行い、同意を得るインフォームド・コンセントを、これまで以上に丁寧に行うことが求められています。しっかりとした説明と同意のプロセスを経ていなければ、患者が安心して治療を受けられないことはもちろんのこと、患者に不利益が生じたときには医療訴訟のリスクも出てくることになりかねません。
近年では、2015年より医療事故調査制度が始まり、万一事故が生じたときに必要な書類作成やヒアリングも必要になりました。また、医療事故調査制度では「予期できなかった死亡や死産」を対象としていますが、予期できなかったという事態を回避するためにも丁寧なインフォームド・コンセントは求められるでしょう。
ただし、産婦人科での死産については原因が特定できないものも多く、産婦人科医は制度の導入による訴訟のリスクを懸念しています。
医師は責任ある立場にあることから、そういった細やかな配慮も欠かすことができず、実際の治療行為以外の業務にも気を配らなければならないのです。
医師の業務量を減らすためには対策を練っていく必要がありますが、絶対的な医師数の不足は医学部定員の拡大といったことから地道に取り組んでいくことが現実的な対策として考えられるでしょう。
かといって医学部入学への敷居が低くなると、医師の能力が担保できなくなる可能性があるため、やみくもに定員を引き上げることはできず、そこにはジレンマが生まれます。
現実的に大きなコストをかけずに取り組める対策としては、他のコメディカルへの役割分担が挙げられるでしょう。また、コストをかけることができる大きな病院であれば、様々な情報の管理を可能な限り電子化していって業務の削減を図り、さらに外来・入院ともにそもそも患者数を抑制するなどの対策が挙げられます。
病院としての経営と医師への負担軽減を両立することは難しいですが、過剰な業務量に関しては何らかの対策を練っていく必要があるでしょう。
日本においては一般的なサラリーマンも長時間勤務や過剰な残業が問題となることがありますが、医師についても世界的な水準からみても業務量が多いといっても過言ではないでしょう。
医師の過労死・うつ病といった問題を引き起こさないためにも、業務量の軽減に向けて対策を練っていく必要があります。