医師の仕事をハードにするものの一つに「オンコール」があります。夜間や休日にいつでも対応できるように待機しておかなければならず、なかなか気持ちが休まりません。
今回は医師のオンコールの実態と、手当の相場などについてご紹介していきます。
病院によっては緊急時の呼び出しがあるオンコールによる当番が必要なことがあります。実際に病院の中で待機を行う宿直と比べると、自宅で待機できるということから自由度は少し高くなります。
オンコールの待機を勤務時間とみなすかどうかは勤務先の病院により異なりますが、インターネット上のある調査では約4割の病院でオンコール手当や時間外の救急対応に手当を支払っているとされています。
オンコール手当は 1回で3万円以上が支払われる場合もありますが、一般的な相場は約7割が5000円以下とされています。ややばらつきは認めるものの、1回あたり概ね数千円が相場といえるでしょう。
宅直とは、病院の外の自宅や周辺で待機し、呼び出しがあったときには当直と同様の勤務を行う勤務形態のことです。
宅直では主に自宅で待機することになりますが、緊急時にお酒を飲んだ状態で出勤し、処置に当たることには賛否両論があります。しかし、いつ呼び出しがあるかわからない産婦人科医や外科医、麻酔科医は一切お酒を飲めないことになってしまいます。
お酒は息抜きのために飲む習慣があるけれど、宅直の日や呼び出しがあるかもしれない日には飲む量は少なめにしてセーブするという医師もいます。
大阪市内の病院の事例では、60代の副院長が飲酒後にお産に立ち会ったことで謝罪を行い、世間を騒がせたことがありました。しかし、後からその医師は当直時に飲酒していたわけではなく、自宅で過ごしているときに飲酒していたという事実が判明したのです。
この医師を不謹慎だと責めるべきなのか、それとも自分のプライベートを捨ててすぐに駆け出したことを讃えるべきなのか、意見は分かれるところでしょう。
これまで暗黙のルールのようにされてきた宅直・オンコール待機のときの自由度をどこまで担保するかは、今後検討すべき課題となります。
オンコールでは連絡を受けたら必ずしも病院に駆けつけるだけでなく、当直医師への口頭での指示や相談という場合もありえます。
実際に直行しなければいけないような緊急の連絡がきた際は、30分〜1時間以内には病院へかけつけなければなりません。
さらに、当直の研修医や若手医師、あるいは夜勤の看護師からコールを受けたときに、事態を甘くみて口頭指示だけで済ませてしまうと、万一のことがあったときには責任を追及されてしまいます。
そのため、口頭指示で済ませることができる場合の方が少なく、多くの場合は連絡を受けたらひとまず医師が自分の目で状態を把握する必要があることが現実です。
特に、外科や産婦人科、小児科をはじめ、交代要員が少ない麻酔科医もオンコールで病院へ直行しなければならないことが多いといわれています。
当直やオンコールが多く、体力的にも精神的にもハードになり、さらに責任を背負うことが負担となるという理由から、それらの診療科を避ける医学生や医師も多い現状にあります。当直で身体的にも病院に拘束するよりは負担は少ないかもしれませんが、それでも医師の急な呼び出しへの対応はハードワークになるといえるでしょう。
医師のオンコール当番は、体力面だけでなく精神的にも気が休まらずに負担に感じる人が多いです。
手当が支払われている病院もありますが、待機中は労働とみなさずに手当を支払わないケースもあり、医師の就労環境を整えることが急務です。