皮膚の炎症や内臓疾患等、症状も原因も様々なかゆみですが、かゆみの起きる詳しいメカニズムはまだわかっていません。
メカニズムがわかっていなくてもかゆみを訴える患者さんはやってきます。今回は、かゆみ止め薬による対症療法を中心とした、かゆみ止め診察のポイントをご紹介します。
かゆみ止め診察においては、何がかゆみの原因となっているのか原因の究明が大切です。かゆみを訴える患者さんを診察する際には、視診や問診、検査によって原因を探しましょう。
視診においては、発疹の有無やかゆみや発疹の発生場所(全身なのか特定の局所なのか)、発疹ができている場合はその大きさや形状が診断のポイントとなります。
外来で診察するタイミングではかゆみが収まっていることも多いため、日中や夜間の症状、かゆみの発生条件、かゆみ以外の症状や思い当たる原因等を問診によって聞き出しましょう。問診によって、虫さされやウルシなど植物へのかぶれなど原因がはっきりすることもあります。
明らかな原因が見当たらないにもかかわらず、かゆみが続く場合は検査が必要です。全身性の病気が疑われる場合は、血液検査で肝機能や腎機能、血糖値、好酸球、IgE抗体の量などを調べましょう。
アレルギーが疑われるときにはスクラッチテストやパッチテストを行います。また、診断を行うにあたって皮膚生検が有効な場合もあります。
病院でのかゆみ止め診察は、かゆみ止め薬によるかゆみの軽減が中心となります。原因や皮膚の状態にあわせ、外用薬や内服薬を用いてかゆみを軽減しましょう。掻くことでかゆみを増長させ、かゆみの悪循環を引き起こしてしまうこともあります。
外用薬による治療では皮膚の炎症を抑える外用薬や保湿剤を用い、内服薬としては主に抗ヒスタミン薬が用いられます。外用薬としてよく用いられるステロイド系外用薬は、効き目の強さで5段階に分類されており、症状の重さや部位、年齢などで使い分けられています。
また、ステロイド剤を含む外用薬を用いることで、かゆみや刺激を感じたり、皮膚が赤くなったりと症状が悪化することもあります。
患者さんには副作用も含め、どういう薬を使用するか理解いただけるまで説明した上で、経過観察を怠らないように気をつけましょう。
頻繁な通院が難しい患者さんについては、外来であらかじめ説明を行ったうえで、翌日以降に電話による症状の確認(電話再診)も効果的です。
かゆみの治療には薬物による治療のほかにも、スキンケアやセルフケアが効果的な場合があります。
スキンケアでは皮膚を清潔に保ち、また、うるおいを保つことで外的な刺激を減らします。まずは、皮膚の表面についた汗や汚れを石鹸などで洗い落とし、石鹸の成分が残らないように十分に洗い流します。
このとき、ナイロンのタオルなどで力強く洗うと、かえって皮膚にダメージを与えてしまうので気をつけましょう。また、皮膚に潤いを与えている成分も洗い流されてしまうのため、刺激の少ない保湿剤でうるおいを与えましょう。
セルフケアとしては、皮膚に過度な刺激を与えないよう、かゆみを誘発する可能性があるものを避けます。衣類を選ぶときには吸湿性や肌触りの良い木綿や合成繊維がお勧めです。洗濯物には洗剤が残らないようにしっかりすすぎ、香辛料の効いた食事やアルコールを控え、爪の手入れに気をつけるなど日常生活での注意点を患者さんに伝えてください。
また、かゆみの症状が続く患者さんには、かゆみの状況を記録していただきましょう。どんなときに症状が出たのかを記録してもらうことで、かゆみの原因を突き止める可能性が高まります。
一般的なかゆみ止め診察のポイントを紹介しましたが、一般的な治療で症状がなかなか改善しない場合、思いもよらぬ原因が隠れていることもあります。
かゆみの症状が続くことは大変つらいことです。原因がなかなか究明できない場合、患者さんのことを第一に考え、他の専門医を紹介することも検討しましょう。