表面的な病気の治療だけでなく、患者さんを総合的に診察するためには本音を聞きだすことが欠かせません。
地域診療において患者さんの本音を聞きだすには、患者さんと医師の間にある壁を取り除くために、医師自身が地域活動に積極的に参加し、地域へ溶け込むことが大事です。
今回は地域へ溶け込むための3つのコツをご紹介します。
一つ目のコツは挨拶。地域での近所づきあいに限らず、人と人とのコミュニケーションの基本は挨拶です。挨拶から立ち話へと深く立ち入る必要ありませんが、医院や自宅の周りで出会う方と挨拶をしましょう。
相手が顔見知りかどうかは関係なく、全ての方に自分から声をかけていくことが大切です。
田舎や地方は新参者やよそ者には厳しい傾向があります。地域の皆さんは、精神的に高い壁を立てて、壁の隙間からどんな人が来たのか静かにじっと見ています。地域の方々からアクションがあることはまれです。壁があるままでは、診察や日常の業務に差し支えが出てくることもあります。
まずはご自分から自宅や診療所の周りを掃除したり散歩したりと、地域の方と出会う機会を作るように心がけ、通りがかった人と挨拶するなど、積極的にアプローチしていきましょう。
ちょっとしたコミュニケーションの積み重ねが地域へ溶け込むことへ、地域診療の成功へとつながります。
医師の仕事は多忙ですが、できる限り時間を見つけて、町内会や地区の集まりに参加するようにしましょう。
地域の行事は地域の文化でもあり、地域の皆さんが非常に大切にされていることです。地域の方が無理強いしてはいけないと気を使ってくれるケースも多いのですが、気を使われること自体が地域の皆さんとの壁だともいえます。
また、地域の集まりに参加することで顔見知りも増えますし、患者さんや病院スタッフの別の一面を見ることもできます。
しかし、田舎では行事も多く、多忙で全ての行事には参加できないこともあると思います。そういった際は、黙って欠席することが無いようにしましょう。
田舎では多くの方が顔見知りのため、行事や集まりに参加しないと誰が来ていないかすぐに分かってしまいます。積み重ねてきた信頼が一気に崩れてしまうこともあります。
参加が難しい場合は、地域の顔役の方にあらかじめ連絡を入れる、行事の内容によっては差し入れを行うなど、ひと手間を忘れないようにしましょう。
地域に溶け込み患者さんの人柄や暮らしぶりを把握することで、よりより地域診療を実現できますが、ディープな部分やうわさ話には立ち入り過ぎないようにしましょう。
地域によっては、地域特有の表には出しにくい話があることもあります。また、どんな地域でもたいていはうわさ話が大好きです。
患者さんが心を許してくれると診察室の中で様々な愚痴やうわさ話を耳にすることもあると思います。そういったとき、話を聞くことは大事ですが、安易に賛同してしまったり、うわさ話を他の人に広めないように注意することは大事です。
田舎の人間関係は想像するよりも狭く、皆が親族関係や友人関係でつながっていることも多いのです。ぱっと見はわからない水面下で、地域内での派閥争いが行われていることも多々あります。
どこかの派閥に属していると思われると、別の派閥の患者さんが心を閉ざしてしまうこともあるので、うわさ話などを聞くことがあっても、決して賛同しないことを忘れないでください。また、うわさ話などを決して自分から広めないことが大事です。
近所付き合いにはわずらわしい点もありますが、地域に溶け込むことで、患者さんの人柄や暮らしぶりなどを把握することができ、より良い地域診療を提供することができます。
せっかく地域診療の場へ身を投じるなら、一段階上の医療を提供するために、地域へ溶け込む努力をしてみませんか。