2016年9月、神奈川県横浜市の大口病院で入院患者2名が連続で中毒死した問題が世間を騒がせました。点滴への異物混入による中毒死といわれていますが、いったい大口病院で何か起こったのでしょうか?
今回は大口病院で起きた事件の概要をまとめていきます。
大口病院は終末期の患者を受け入れていた状況から、近所の人からも「大口病院に入ったら最期が近い」と認識されおり、病院の前は「霊柩車通り」と呼ばれていたようです。
大口病院では終末期の患者が多く、他の病院で受け入れを断られた人のケアも行っていました。2016年の7月から9月20日までの間には48人が死亡し、いくら終末期の病院とはいえ多すぎるのではないかとの見方もあります。
これまでにも、他に犠牲になった方がいる可能性はゼロではないかもしれません。大口病院の4階で次々と患者が亡くなることから、内部では「4階は呪われている」ともいわれていました。
一般的な感覚からすれば、これだけたくさんの患者が立て続けに亡くなると疑問視されそうなものですが、重症の患者が多いこともあり問題にされていなかった経緯があります。その中で2016年9月、点滴に界面活性剤を混入させた殺人事件が世間を騒がせました。
2016年の4月には看護師のエプロンが切り裂かれるというトラブルがあり、同年6月には患者のカルテが紛失もしました。また、同年の8月には看護師の飲み物に漂白剤のような異物が混入するなど、不穏な状態が続いていました。
これらのトラブルは全て今回騒ぎになっている大口病院の4階で発生しています。大口病院は、終末期の重症患者の受け入れを行っていることにより看護師の負担も大きく、仕事へ不満を持っている方も多かったようです。
「終末期のケア」というだけでも心身ともに負担がかかりますが、離職率も高いために人材不足で仕事の量が増えてしまっている状況だったようです。
内部でのトラブルが相次いでいたことや、同じフロアで事件が起こったことから、"職場に不満を持っている内部の人間による犯行"との見方が強いです。
こういったトラブルがあると安心して働くこともできませんが、殺人事件が起きてこれまでの一連の経緯がようやく明るみに出たというところです。
病院内でも点滴を扱うことのできる人物は限られており、内部の人間による犯行の可能性が高いです。
エプロンを切り裂かれ、飲み物に異物を混入された看護師は同一人物ですが、カルテの抜き取りや患者への点滴異物混入など、「病院全体をターゲットにしている」と専門家は話しています。個人的なトラブルというよりは、病院に対する不満を持った人物である可能性が高いともいわれています。
また、未使用の点滴に異物を混入できる人間は限られてきます。しかし、すぐに逮捕に結びつかない背景には、決定的な証拠がないことが挙げられます。ラテックス製の手袋を使用していれば指紋はつきませんし、病院内には防犯カメラが設置されていませんでした。
内部ではある程度犯人に目星がついているかもしれませんが、決定的な証拠がなければ身動きが取れません。事件以降、大口病院では院内に防犯カメラを設置し、点滴を含む薬剤を鍵付きの戸棚で管理するようにしています。さらに、警備員や夜勤看護師の数を増員するなど対策に当たっています。
今回のような事件が起きて病院の信頼が失われることは大打撃となるため、コストがかかってもできる対策は行うことがベターでしょう。
終末期という特殊な領域での勤務体系を整備することはもちろん、何か不穏な予兆があったときには見過ごさないことが重要です。
また、防犯カメラの設置や薬剤の管理など、できる対策は行っていくことが望ましいでしょう。
追加情報:捜査本部設置から半年 大口病院、常勤わずか3人に 県警6646人投入し捜査続く
横浜市神奈川区の「大口病院」で点滴を受けた男性入院患者2人が中毒死した連続殺人事件は、県警が昨年9月に神奈川署に捜査本部を設置してから23日で半年が過ぎた。病院は昨年12月に入院病棟を閉鎖。現在は一部の外来診療を受け付けるのみで、職員もほとんどが退職した。捜査本部は病院関係者が事件に関与した疑いがあるとみているが、捜査はすでに長期化。聞き込みなど地道な捜査が続く。