医師をはじめ、医療現場に関わる人であれば「ヒヤリハット」を経験したり、見たりしたことのある人も多いでしょう。
医師も人間なので業務の中でヒヤリハットを起こしてしまう可能性もゼロではありませんが、その実態と事例、そして対応策について紹介していきます。
医師向け情報サイトのケアネットが実施した、医師1000人を対象とした調査によると、なんと医師のうち9割がヒヤリハットを経験していることが明らかになりました。ほぼすべての医師がヒヤリハットを経験しているといっても過言ではありません。
この調査では、9割の医師が過去1年以内にヒヤリハットを経験し、さらに月1回以上のヒヤリハットを経験している医師も3割に達しました。この結果をみると医師は常にヒヤリハットと隣り合わせということもできるでしょう。
若手医師であればどんな点に注意すべきかという経験値の面でヒヤリハットのリスクが高く、ベテランの医師でも油断がヒヤリハットにつながることもあるでしょう。また、忙しい業務が多く、大量の患者に対応している病院では、当然ミスも生じやすくなります。
どうしても間違いは生じてしまうものですが、その可能性を限りなくゼロに近づけるために、どんなヒヤリハットが起こりやすいかを把握しておくことが重要となるでしょう。
誰でも間違いを起こす可能性がありますが、経験の浅い研修医であればなおさらヒヤリハットのリスクが高まります。
研修医は、さまざまな病院や診療科をローテーションして研修を進めていくことになりますが、数ヶ月ごとに環境が変わるとヒヤリハットの可能性も高まります。
実際に、ヒヤリハットの事例は、医師としての経験年数というよりは、部署の経験年数が短い場合に報告が多くなるともいわれています。慣れるまでは必然的にミスが出やすくなってしまうでしょう。
病院によっては当直や夜間の呼び出しを研修医中心に対応している場合もあり、そうなると睡眠時間も不足し、体力的にもハードになります。睡眠時間が足りなくなると注意力も削がれるため、ヒューマンエラーの可能性が高まります。
食事を含む身の回りのことを効率よく、時間を短縮しながら進め、できるだけ睡眠時間を確保することがヒヤリハットの防止に貢献するでしょう。
医師の9割が経験しているというヒヤリハットは、具体的にどんな内容で多く報告が上がっているのでしょうか。
まず、よくあるヒヤリハットとしては薬剤投与量の計算間違いが挙げられます。患者の年齢に応じて投与量を計算しなければなりませんが、このときに小数点を一つ間違えるだけで、本来投与すべき量よりも10倍の量を処方してしまう恐れがあります。
数字一つのことではありますが、それでも重大な医療事故につながる危険性があります。また、薬の名前も似たようなものが多いため、間違えないように気をつけることが大切でしょう。
また、コンピューターで薬の名前を2文字入力すると候補が出てきて、それをそのまま使うと実は「類似した名前の違う薬だった」というヒヤリハットも存在します。
そのほか、同姓同名の患者の取り違えや、受診日の誤記入といった例も存在します。受診日の誤記入は、保険金の支払いなどに大きな影響が出て、修正が必要となる場合があるので、正確に記入するように心がけましょう。
いずれも典型的なヒヤリハットですが、油断すると引き起こす可能性があるため、少なくともよく起こるパターンは頭に入れて気をつけるようにしましょう。
医師は常に責任が問われる職業ですが、医療ミスや医療訴訟を回避するために、そして何より患者を守るためにもヒヤリハットはゼロにしたいところです。
よくあるヒヤリハットの事例と注意すべきポイントを頭に入れ、日々の業務にあたりましょう。