厚生労働省が数量シェア80%以上を目標にする後発医薬品(ジェネリック医薬品)について、医師の皆さんはどう考えているのでしょうか。
医師専門コミュニティサイト「MedPeer」による「後発医薬品の使用割合は増やせるか?」というアンケートの結果よりご紹介します。
医師専門コミュニティサイト「MedPeer」が2016年2月に会員医師を対象に行ったアンケート調査(3740名の医師が回答)では、「後発医薬品の使用割合は増やせるか?」という質問に対し、74%の医師が「まだまだ増やせる」または「どちらかといえば増やせる」と回答しています。
アンケートに寄せられたコメントでは、「経営上の問題もあり院内処方は後発医薬品の使用割合を増やせる方針です。(50代、腎臓内科・透析、勤務医)」と薬価差益が病院経営にとってもメリットとなりえる事が正直に書かれています。
また、「医療経済的には増やさないといけません(50代、麻酔科、開業医)」と患者さんにとっては安く薬を手に入れられるメリットがあり、社会的にも医療費削減につながるために増やさざるを得ないといった大局的な意見が伺えます。
しかし、「後発医薬品は使用しない」とする医師が4.6%もおり「臨床試験をしておらず、主成分が"本物の薬と同じというだけの化合物"を責任をもって投薬できない。(50代、一般内科、勤務医)」といった厳しい意見があります。
また、使用割合を増やせるとしている7割以上の医師についても、「ただし、後発品の安定供給、品質、情報提供がしっかりしているのが大前提です。(50代、精神科、勤務医) 」等と、今のままでは後発医薬品の割合は増やせず、副作用などの安全の担保や十分な情報提供を必要としています。
医師や薬剤師など医療関係者の間で後発医薬品への信頼性が低いことは厚生労働省も理解しており、平成24年には「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」といった小冊子を作成するなど努力はしているようです。
しかし、有効性の試験はしていても安全性の試験を行っていないといった薬剤そのものに対する問題点や、分かりづらい商品名や不安定な供給点など薬品管理上の問題があり、後発医薬品への不信感は根強いようです。
価格的なメリットがある一方、品質や商品管理上のデメリットがある後発医薬品ですが、投薬を受けるかどうか最終的に決めるのは決めるのは患者さんです。
アンケートでも、「患者さんに情報を増やせばまだ伸びると思います。(60代、一般内科、開業医)」と、医師から患者への情報提供も必要だとする声があがっています。
特に公費負担の無い慢性的な疾患では、先発医薬品と後発医薬品の価格差はかなりの額になってしまい、患者さんの金銭的負担増やQOLの低下へとつながることもありえます。患者さんの選択肢として後発医薬品の存在を説明することは必要でしょう。
しかし、当然ながら医師として無責任に後発医薬品を勧めることはできません。
「後発医薬品品質確保対策事業」の検査結果報告書やジェネリック医薬品品質情報検討会の試験結果に目を通すなど、十分な情報収集を行ったうえで、患者さんへのリスクも含めた情報提供をすることが求められます。
また、患者さんから後発医薬品への切り替えの同意が取れた際にも段階的な導入を行いましょう。後発医薬品を一定期間投薬した上で、副作用などの問題を確認することで、品質面での不安を軽減することができます。
いかがでしたでしょうか。
後発医薬品は患者さんに金銭的なメリットがあるだけでなく、医療費抑制の観点からは社会的にも必要とされています。
しかし、メリットばかりではなく品質面などのリスクもあります。患者さんにリスクを説明し、患者さん自身が理解したうえで先発医薬品と後発医薬品を選択できるように、医師も勉強をすることが必要です。