日本においては「予防医療」という意識が根付いていないことが実感できるのではないでしょうか。人々の健康を守り、医療費を削減するためにも、予防医療は欠かせないものであるはずです。
今回は、なぜ日本人は予防医療に対して積極的でないのか、その要因を分析していきます。
日本の医師は医学部に在籍している頃、あるいは医師になったあとも「病気を治す」ことに価値を見出しているものです。病気で苦しむ人々を救うことにこそ価値があると考えている人が多いのです。 医師は病気を治して、患者から「ありがとうございます」という言葉をもらう。そんなイメージが根付いていることは事実でしょう。
しかし、実際に人々の健康を考えるときには、病気を治すだけでなく「予防すること」も同じくらい重要なことです。治療をする上で将来的なリスクを考え、部分的に予防の意識を持つことがあっても、健康な人の疾病予防に対する意識は乏しいことが実情です。
すでに病気になった人の治療をすることも大切ですが、そもそも病気にならないように予防的な観点を持つことも不可欠なのです。
日本の場合は、国民皆保険制度を導入しており、何か健康に不具合があれば近くの病院にいくというスタイルが一般的です。日本人は保険によって多くの方が3割の自己負担で済むのに対し、皆保険制度を導入していない国では自費で10割負担になる場合もあります。 そのため、海外では「自分の健康は自分で守る」という考えを持っていることは少なくありません。
アメリカを例に見てみると、テレビなどで病院や薬の広告が流れてきて、自分で判断・決定をしていくことが当たり前になっています。さらに、サプリメントを飲むことも一般的で、健康管理に関して自分で選択・決定していくプロセスが根付いています。 アメリカではオバマケアによって医療制度に変化がありましたが、もともとは民間人が自分で考える医療が中心だったのです。
アメリカでは自己責任の医療であるのに対し、日本では医者頼みの医療であることは間違いありません。
近年、日本人の健康志向が高まり、食事や運動に気を配っていたとしても、疾病の予防や管理という観点を持っている人はまだまだ少ないです。医療リテラシーが乏しく、自分で主体的に健康管理を行うという意識が希薄であるために予防医療のニーズが高まらないという側面があります。
ただ、最近ではインターネットで医薬品を購入することも可能になり、一歩ずつ自己管理の意識が高まってきている部分はあるでしょう。
歯科に関しても同様に虫歯になって痛みが出てから治療に行く人が圧倒的に多い傾向にありました。これまで自分が歯科をどのように利用してきたかを振り返ってみても、虫歯が痛くなってから慌てて歯科に行った経験がある方も多いでしょう。
日本歯科医師会では、広報活動としてテレビCMを作成し、予防歯科に関わる宣伝も行っています。毎日のセルフケアと、歯科医院でのケアをあわせて行っていくことが良いと推奨し、PRしているのです。
また、歯磨き粉のCMでは、予防歯科をキーワードに宣伝しているものも出てきています。様々な方面から情報が流れることによって、「予防歯科」という言葉が普及したのです。
今後、定期的な歯科検診や歯垢除去などを受けてみようと思う人が増えていくでしょう。
医療においてはまだまだ予防という観点が乏しいですが、患者の健康を守り、医療費を削減するためには必要な視点です。
予防医学というもの自体、比較的新しいものであることから、今後の発展が期待されます。また、国民自身が「自分で考える医療」を意識していくことも大切でしょう。