医師の多くは、近い将来AIが導入されると感じているのではないでしょうか。どんどん実用的になっていくAIの技術が医療現場で応用される日もそう遠くないでしょう。
AIが導入されるとしたらどのような位置付けになるのか、最新の見解を解説していきます。
日本病理学会では、学会認定施設23施設より合計69万2961例の病理画像を収集し、ダブルチェックに用いる診断ツールやe-ラーニングのツール、自動診断ツールなどを開発する方針です。
トライアル研究においては、正常な胃の画像11枚、胃癌の画像10枚、判断が難しい癌の画像2枚、胃癌ではない境界病変の画像11枚を用い、AIが病理診断を行えるかどうか検証しました。その結果、正常な画像と胃癌の画像の識別率は70%という結果になりました。
正常な画像と胃癌の画像を見分けることは病理医にとって容易なことですが、さらに判断が困難な癌や境界病変を含めても識別率は61%だったのです。トライアル研究で、病理医の診断を支援するツールとしての手応えを掴むことができたといえるでしょう。
日本病理学会の研究では、診断を支援するツールとしてAIを活用することはもちろん、自動診断の機能も開発のプランに含めています。
AIが補助的なツールとなるのか、あるいはAIが中心となって診断を行うのか、その位置付けに関しては議論が続けられています。
2017年3月、厚生労働省は「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」においてAIを使う際の基本的な方針について提示しました。
厚生労働省が定めた方針としては、AIを診療支援に使ったとしても、最終的な意思決定は医師が行い、責任も医師が負うことが示されています。この案に対する反対意見はなく、会議に参加した全ての人がAIを「診療支援」に用いるべきと結論付けた形になります。
医師として仕事をする上で、ガイドラインやエビデンスに基づいて治療を進めていくことは基本ですが、経験や勘が頼りになる場面にも遭遇するでしょう。
まだ医学で証明されていないことも多く存在し、経験や勘をなくして診療することは難しいです。医療現場でAIを使う日が来ても、最終的な判断は医師が行うという方向性になる見込みです。
医療現場にAIが導入される日が来ても、当面は医師の役割は大きく変わらないことが予想されます。始めのうちはAIが診療を補助する役割を担い、最終的な決定は医師が下すことになるでしょう。
これまでも臨床の業務の中でインターネットに頼った経験のある医師も少なくないことが実情です。インターネット上から医学論文や症例報告を参照し、診療に生かすことはもちろんのこと、インターネット上にあるちょっとした情報を参考にすることもあります。
また、多くの病院では電子カルテが導入されるようになり、情報を一元的に管理できるようになったことで診療の効率が向上したことは実感できるでしょう。
AIの導入に抵抗感がある方もいるかもしれませんが、既に医療は様々な技術をなくしては成立しない段階にきているのです。
技術は大きく発展しており、AIによる機械学習の力はが診療を補助してくれるツールとして貢献する日も近づいています。ただ、最終的には医師自身の判断が重要となり、最終決定をした医師に責任が伴うことになるでしょう。
AIの安全性や有効性については、各学会でも力を入れている領域であり、これから検証されていくでしょう。
当面の間は、AIを使った画像診断などが補助的に用いられ、最終的な意思決定は医師が行っていくというスタイルになる見込みです。AIによる診療支援
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急速に技術が発展し、AIを様々な分野で応用する動きが出てきました。医療分野においてもAIを活用すべく、様々な取り組みがなされています。 すでに医療においても、これまで医師が行ってきた業務の一部をAIが担うような方向で開発や試験が続けられています。 |
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人工知能(AI)の目覚ましい進歩...医療に導入される日は近い? 近年、人工知能(AI)が急速に発展してきましたが、医療においてもAIを導入する日がくるのでしょうか。AIが医療で活用されることについては、医師の意見も様々です。 今回は医師を対象としたAIに関するアンケート結果から読み取れることをまとめていきます。 |