2016年9月、横浜市の大口病院で入院患者2名が点滴を受けて中毒死した事件が世間の注目を集めました。
その後、すっかり報道されることが減りましたが、調査によって市の初動が不適切だったのではないかと指摘されています。医療機関での事件を防ぐためにはどうすればいいのか探っていきます。
2016年9月、神奈川県横浜市にある大口病院で、入院患者2名が中毒死する事件が起きました。この事件では入院患者の点滴に界面活性剤が混入したとされています。さらに、同年7月1日から9月20日までの間に、48名の患者が同じフロアで亡くなっていたことも明らかになりました。
大口病院では、事件があった翌月から警備員を増員したり、看護体制の強化などに当たり対策を行っていました。大口病院としても安全性を担保し、信頼を取り戻すための努力はしていますが、入院病棟は閉鎖する方針であるといいます。やはり入院患者の点滴に異物が混入するという衝撃的な事件のあとでは、病院としても診療を続けることが難しいと判断したのでしょう。
大口病院事件に関連して、横浜市の対応を検証するための第三者委員会の報告案が2017年3月に提出されました。大口病院では、事件前にも看護師のエプロンが切り裂かれたり、飲み物に異物が混入されたりとのトラブルが相次いでいたと報じられています。こうした院内トラブルについて、横浜市は事前に把握していたにもかかわらず対応をしなかったことが第三者委員会の報告により示されたのです。
横浜市は事実を把握していながら9月上旬の定期立ち入り検査までの間、病院に行って事実確認をすることもありませんでした。これは、「医療安全に携わる者として不適切」と指摘を受けることとなったのです。
少なくとも院内トラブルについて報告を受けた時点で、情報提供者に詳しい話を聞いたり、病院に事実確認をすべきだったのではないでしょうか。
今回、大口病院から院内トラブルの情報提供を受けていながら、事実確認さえも行わなかった横浜市の対応が批判されることになりました。病院で看護師のエプロンが刻まれたとのエピソードを聞いたとき、「ただのいたずらだろう」と危機意識を持たずに過ごしてしまう人は意外と多いかもしれません。
ただ、大口病院では、事件前に様々な院内トラブルが起こっていました。患者の入院カルテがなくなり、別のフロアの看護部長のデスクから見つかるなどのトラブルもありました。さらに、ある看護師の筆箱には注射針が10本以上も刺される嫌がらせもあったといわれています。これほど多くのトラブルが院内であったにもかかわらず、病院サイドも横浜市も危機意識を持たずして過ごした結果の事件といっても過言ではないでしょう。
何か事件が起こってからでは手遅れになってしまうので、最悪のケースを考えて早めに対処していくことが望ましいです。院内において不審な出来事があっても見て見ぬふりをするのではなく、場合によっては情報提供する勇気も必要です。
また、管理者の立場にある場合には、少なくとも従業員が仕事に対して不満を持っていないかどうかは意識しておきたいポイントです。仕事の不公平感といった不満からトラブルを起こすケースも少なくないため、就労環境を整えることは最低限の対応として必要となるでしょう。院内で不穏な予兆があったときには、危機意識を持って生活していきたいところです。
大口病院事件では、情報提供を受けていたのに早期から対応しなかった横浜市も批判されることになりました。病院側も院内トラブルについて楽観視していた部分があるでしょう。
何か起こってからでは取り返しがつかない事態に陥ることもあります。患者や従業員、病院を守っていくために危機意識は持っていたいところです。