昔と比べて、今では「往診」というスタイルは減少してきました。昔ながらの診療スタイルが、新しいシステムによって実現されようとしています。
今回は、医療版Uberと称される新しい往診システムについて取り上げていきます。
Uberは、アメリカ発祥のタクシー配車サービスです。ヨーロッパでも浸透しましたが、タクシー業界の労働者が利用者を持っていかれることに抗議し、デモが起こったほどの影響がありました。2014年からは東京にも試験的に導入されており、身近なサービスとなりつつあります。
Uberは、アプリを介してタクシーを呼ぶことができるサービスです。迎えに来てほしい場所を地図から選ぶと、タクシーが迎えにきてくれ、あと何分で到着するのかもアプリ上に表示されます。支払いは登録したクレジットカードでOKのため、小銭を出す手間も必要なくキャッシュレスで利用可能。降車したあと、領収書がアプリに表示される仕組みになっています。
海外ではタクシーを利用すると遠回りされたり、ぼったくりの被害に遭ったりと、安心できない側面があります。Uberなら、ドライバーの評価を確認して選ぶことも可能であり、慣れない土地でも安心して利用できるというメリットもあります。タクシー業界では次世代のサービスが誕生したといえますが、このサービスが医療と融合しようとしているのです。
医療界のUberとして注目されているのが、株式会社FastDoctorと株式会社シェアメディカルが提携して開発した「スマート往診システム」です。アプリで医師を自宅に呼び、往診してもらうことができるサービスを展開しています。
医師はドライバーが運転する車で移動するので、往診先へ向かっている最中もチャットで応対可能です。「熱はありますか?」「脇の下を冷やして待っていてください」といった具合で、時間を有効に使ってやりとりできるのです。費用は保険診療の自己負担分と交通費を合わせた金額で、クレジットカードで決済可能です。体調の悪いときは少しでも省エネを心がけたいところですが、キャッシュレスなら患者にとってメリットになることはもちろん、サービスを提供する側からしても費用を支払ってもらえないなどの事態を回避することができます。 サービスは東京23区・千葉県の一部を対象として、順次エリアを拡大していく予定のようです。
スマート往診システムの導入により、往診が身近なものになることが予想されます。往診システムの導入によって、患者・医師の双方にどのような影響があるのでしょうか?
患者としては、病院での待ち時間削減や、感染症のリスクを回避できるというメリットがあります。高齢者などは一人で病院へ行くこと自体がハードルとなってしまうケースも多いですが、往診のサービスが身近なものとなれば、本人・家族の負担を減らすことにつながります。
医師にはフリーランスとして地域の医療に貢献できるという新しい働き方を提供できるという側面もあります。また、若手医師が経験を積む目的で往診サービスを利用して働くということも可能でしょう。患者にとっても利便性が高く、医師にとっても様々な働き方を実現できる魅力溢れるサービスということができます。
また、夜間に要請を受けた救急車が出動するとき、95パーセント以上の患者は軽症であるというデータも存在します。軽症患者の救急の利用によって、現場への負荷が大きくなっていることは事実です。スマート往診サービスの導入によって、軽症患者の救急車要請を減らすことが期待され、社会的にも意義のある取り組みになることが予想されます。
医療版Uberの「スマート往診システム」は、患者・医師・地域にそれぞれメリットがある画期的な仕組みを採用しています。 その利便性から地域に浸透していくことが予想されますが、医師にとっても新しい働き方の選択肢が与えられることになるでしょう。