健康経営を始める会社が増えています。しかし、健康経営という言葉を聞いたことがないという企業もたくさんあり、その趣旨や効果はまだ十分に浸透しているとはいえません。
健康経営の意味と導入のメリットをご紹介しましょう。
東京商工会議所が、2017年7月14日に発表した調査では、健康経営という言葉を聞いたことがないという企業が4割に達しました。一方、聞いたことはあるが、内容は知らないという企業が約3割、すでに取り組んでいる企業は約3割となっています。 健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。社員一人ひとりの健康維持・管理に、企業が積極的に関与することで、社員に健康で長く働いてもらい、モチベーションや生産性の維持・向上を目指す戦略的取り組みです。
健康経営を推進する経済産業省は、次のような効果を期待しています。 1. 国民の健康を増進 2. 医療費の適正化・抑制を促進 3. 企業業績の向上や新産業の創出を実現
労働人口の減少で人材不足が叫ばれ、高齢者の雇用も増えています。一人ひとりの労働者に、健康で長く働いてもらうことがますます重要になってきました。 さらに、近年ブラック企業が問題化し、社員の健康を重視する経営を前面に出すことで、労働者に安心感を与える効果もあります。実際、健康経営の導入は大手だけでなく中小企業にも広がり、健康経営優良法人の認定を受けるところが増えています。
1. 東燃ゼネラル石油(株) 産業衛生部門が作業現場を検証し、有害因子をチェックします。 その結果に基づき、医務部門が有害因子のもたらす健康への影響をチェックし、二つの部門の密接な協力体制で健康リスクを見逃さない管理を行っています。
2. TOTO株式会社 治療型であった工場の診療所を「ヘルスケアセンター」という予防型施設に転換し、健康管理、健康の増進、メンタルヘルス不調者を減少させる取り組みを強化しました。 ヘルスケアセンターは、健康をテーマにしたコンテンツを社内に発信するとともに、健康イベントやセミナーを行うなど、全社の健康管理を担う中核組織として機能しています。
3. サントリーホールディングス株式会社 副社長が健康づくりの責任者に就任し、取り組みを推進しています。 具体的には、睡眠セミナーの実施や1食当たり500kcal程度のヘルシーランチの社内販売です。さらには、健康診断の結果からメタボ傾向の社員を抽出し、1泊2日のメタボ選抜合宿を実施するなど、ユニークな取り組みを行っています。
4. 中小企業の取り組み その他、健康診断の受診率100%を10年以上続けている、品川区のヤスマ株式会社。歩いた距離を四国巡礼に当てはめて、進捗度を見える化した「ゆめウォーク」を実施する、世田谷区の株式会社ゆめみなど、多くの中小企業も独自の活動を通して、健康経営を実践しています。
健康経営は社員の健康を増進し、心身の不調者を減らし、働きやすい職場をつくることで、生産性を向上し、新事業や新たなサービス開発につなげるという好循環をもたらします。従業員の健康づくりの費用はコストではなく、企業の存続と成長のための投資と捉え、社内と社外のリソースを上手く組み合わせ、効率良く導入しましょう。