AIや遠隔医療の技術をはじめ、テクノロジーが医療の現場へ着実に浸透してきています。将来的には我が国においても導入されうるテクノロジーについては知っておきたいものです。
今回は、アメリカにおける医療ITがどこまできているのか現場を見ていきます。
アメリカでは2017年にトランプ大統領が指揮するようになり、オバマケアに関する混乱が生じました。オバマケアによって安心して医療を受けることができていた層も不安と隣り合わせになりました。アメリカでは、もう保険には頼れないという考えが生まれ、保険商品の先行きも怪しくなってきています。
最近ではできるだけ少ないコストで最大の医療を目指すという方向にシフトしてきており、ITの力で医療費抑制に向けて動き出しているのです。
例えば、保険会社大手ユナイテッドヘルスグループの子会社であるオプタムでは、保険業務の中で得た膨大なデータをもとに、被保険者のデータを分析し、最も効率的かつ低コストで治療できる病院や医師の情報を探し出す試みを始めています。
保険会社というよりはIT企業のような働きになっていますが、このように低コストで医療を受けるための情報・商品を開発しているのです。
コストパフォーマンスを重視するときにもテクノロジーの存在は欠かせません。もはや保険に頼りきったスタイルで振り回されるよりも、こうした情報を扱う戦略の方が恩恵が大きいと考える人が増えているのでしょう。
近年は、Appleやフィリップスなどの大企業が医療ITの開発に参画しています。グーグルの関連子会社であるベリリでも、人の体に関する情報を収集するプロジェクトを始動しました。
2017年の4月から4年間かけて、1億ドルのコストを投じ、1万人のアメリカ人を対象とした調査を行っています。この調査では、大規模な身体モニタリングや健康診断、心拍数や心臓の状態の追跡など、精密検査を行い、心臓疾患やがんを早期に発見するための予測因子を探すことを目的しているのです。
このように、大手の企業が大量の情報を収集した上でデータ化・分析し、医療ITに役立てていこうとする動きが目立っているといえます。未来を見据えた企業らしい取り組みということができるでしょう。
世界の遠隔医療の市場規模は大きくなってきています。調査会社のMordorIntelligenceによると、遠隔医療の市場規模は2020年までには340億ドルに到達するといわれています。
テレメディスンはアメリカでは普及しており、スマホアプリなどを使ったサービスも誕生しています。どんどん遠隔医療が身近な存在になってきているのです。
ただ、日本の場合は効率性よりも対面での診察や治療を重視する傾向にあり、効率性や合理性に関しては優先度が落ちてしまいがちです。確かに対面でしかできない検査や治療もありますが、一方で対面の必要性がないケースも少なくありません。
日本の医師数・マンパワーの問題が全くないのであればそこまで効率化に注力しなくても良いかもしれませんが、医師不足や高齢化が叫ばれ、医療現場に負担がかかっている状況では考慮すべき部分といえます。
固定観念を捨て、あくまでも最大多数の最大幸福という考え方に基づき、遠隔医療を積極的に取り入れてみることも有用な解決策になるでしょう。
時代とともにどんどん進んでいるテクノロジーの技術。日本では電子カルテの普及などの面で技術が浸透している部分はありますが、医療ITに関してはまだまだアメリカに劣る部分が大きい。古いやり方に固執しすぎると効率性が損なわれるため、必要な部分は吸収していく姿勢が求められるでしょう。