地域医療は、これからの医療を考える上で欠かせないテーマ。各都道府県で地域医療構想を掲げていますが、実は解釈に一部ばらつきがあるということもわかってきました。
今回は地域医療が目指すところはどこにあるのか解説していきます。
地域医療といえば、「病床数の不足」や「医師不足」が問題になっていると認識されています。「地域医療構想」とは、2025年に向けて病床の機能分化や連携を図るために定めるもので、この構想では医療の需要・病床の必要数を推計します。
地域医療構想は都道府県医療計画の中で策定されるものです。2016年8月時点では地域医療構想を策定済み19件、素案策定済み14件となっており、推計した結果、その地域において病床機能が不足すると見込まれる場合には、増床や機能転換を行うとされています。
地域医療構想の中では、病床数を削減するという目的がイメージされやすいですが、実はそれだけではありません。
病床数を減らせば良いという単純な構造ではありませんが、実際に地域医療構想の中で「病床削減のためではない」という内容が盛り込まれたのは、都府県のうち36.4%に止まっていました。
都道府県によっても策定済みの案の記述にはばらつきがあり、将来的に地域医療がどういった方向に向かっていくのかに関しては足並みを揃える必要があるでしょう。
2016年8月時点で公開されている地域医療構想の中で、かかりつけ医に関する記載があった割合は約6割です。具体的な地域医療の施策の方向性として、かかりつけ医が重要だと考えている都道府県が多いことがうかがえます。
高齢化や医療費の増加、医師不足といった医療が抱える問題を解決するためには、医療機関の役割分担が欠かせません。
かかりつけ医は、いわゆる「町のお医者さん」であり、住民から健康や病気に関する相談を受け、診察や投薬を行います。かかりつけ医は必要に応じてより専門的な病院へ患者を紹介し、役割の分担を図っていきます。
また、病状が安定したら再び身近なかかりつけ医のもとで治療・経過観察を続けていくというスタイルになります。そういった意味で、かかりつけ医の質もある程度担保されるべきものといえるでしょう。
また、国民の意識として「かかりつけ医」に対する認識は不十分であり、普及に向けて努めていく必要があります。医療者だけでなく、一般国民もかかりつけ医の位置付けについて理解するプロセスがなければ、現実問題として地域医療を最良のものにしていくことは難しいと言えます。
今後の地域医療の鍵を握る存在がかかりつけ医といっても過言ではないので、社会全体で取り組んでいくべきでしょう。
理想の地域医療を実現するためには、病院だけでなく、地域全体のサービスを総合して考えていく必要があります。一部の組織だけが地域医療を牽引しようとしても限界があるものです。
それぞれの地域では、在宅医療や介護サービスなど、地域を支える仕組みがあります。こうしたサービスを包括的に見て、共に協議していく姿勢が必要になってくるでしょう。
「連携」や「協議」の必要性については長く提唱されているものの、現場では具体的なプランに関する情報を得る段階には至っていません。連携や協議が必要であることは多くの人が納得できるものですが、具体的なアクションに移すための指針作りも必要になってくるでしょう。
地域医療は病院が単独で進めていけるものではありません。病床数の減少が目標というわけではなく、地域のニーズに合わせた対応が求められます。
地域には病院があるだけでなく、住民がいて、各種サービスがあるため、各機関で協働して地域医療を実現していく必要があるでしょう。