医師のキャリアアップを図るための一つの手段として、「留学」という選択肢があります。医師の方なら一度は視野に入れたことがあるかもしれません。今回は、臨床留学と研究留学では何が違うのか、キャリアにどのように影響してくるのか解説します。
臨床というフィールドで留学するには、海外の若手医師と対等にディスカッションできるだけの知識やスキルも求められてきます。アメリカの新卒医師・若手医師のレベルについていけるように、学生時代のうちから必死に勉強しておく必要があるでしょう。
臨床留学の場合は、留学期間も3年が一区切りになっているケースが多く、海外でそれだけの期間過ごすためのバイタリティも求められます。患者と接する上でのコミュニケーション能力も必要になるので、語学に関してはある程度のスキルが必須になってきます。
研究留学の場合は、博士号を取得したあと数年のうちに留学するケースが多いです。期間は1年から2年ほどが多い傾向にありますが、こちらはケースバイケースです。
臨床留学と比べると、患者と直接接する場面が少ないので、基本的なリスニングができて、自分の意思や考えを英語で表現できれば乗り切ることができるでしょう。実際の医療現場で学ぶときと比べて、比較的会話のペースも合わせてもらえるはずです。
アカデミックなフィールドで活躍したいと考えている場合は、研究留学はある意味登竜門ともいえる位置付けになるでしょう。海外の水準で研究のノウハウやスピード感を学んでおくことはキャリアにとってもプラスになります。
留学先に関しては、正直コネで決まることも多いというのが実情です。教授がコネクションを持っていれば、他国の医師・研究者のもとで学ばせてもらう機会を得ることもできるでしょう。特に臨床留学の場合はそうした傾向が強いようです。
臨床留学の場合は、どうしてもここで最先端の技術を学びたいという希望がある場合はそれを貫き通し、なんとか交渉することもあります。また、マッチングシステムを利用する場合もあるので、いくつかの方向からアプローチしてみると良いでしょう。
一方、研究留学に関してもコネクションで決まることがありますが、中には自分で論文などを読んで気になる研究者にコンタクトをとるというケースもあります。受け入れ可否を決める際にテレビ電話で面接に当たるプロセスを経て、語学力や希望の研修内容がマッチするか確認することもあるでしょう。
コネクションがすでにある状態で留学をすると、関係性の基盤ができているため、すんなり実際の研修や研究に入っていける可能性が高いです。場合にもよりますが、全く関係性がない状態だと、まずは自分を認識してもらうことから始めなければならないので、少々遠回りになることがあります。しかし、全く新しい環境へ飛び込んでみると発見することも多くなるでしょう。
臨床・研究ともに留学を経験することによって、国際学会への参加に対する敷居も低くなります。海外に軸足を置いて過ごすことで、国際水準で情報収集・発信するためのベースとなる能力を培うことができるのです。留学を経験した人とそうでない人では差が出てくる部分でしょう。
研究の場合は国際水準で勝負できるだけのスキルが身につきますし、臨床でトレーニングを積む場合は日本では学べない高いレベルの技術を習得できる点がメリットです。
外科系に関して言えば、受け持つ症例数が多いため、日本にいるよりも短期間でレベルの高い手技をマスターできる可能性もあります。若いうちにキャリアを積むために海外へ留学を検討してみるのも良いかもしれません。身近に経験者がいれば話を聞いてみるとより具体的なイメージが湧くでしょう。
必ずしも医師は留学すべきというわけではありませんが、やはり新たな学びが多い機会となるはずです。医師としてキャリアアップするための方法として視野に入れてみたいところでしょう。新しいことを吸収しやすい年齢のうちにトライしてみるのもいいかもしれません。