より高度な診療・治療設備が整えられた「ハイブリッドER」への注目は高まっており、既に導入している一部の医療機関からは、これにより患者の死亡率が3割減少したとの報告もされています。そこで今回はこの「ハイブリッドER」について、解説していきたいと思います。
ERと言うと、重症患者が運び込まれる救急室を思い浮かべる方も多いでしょう。では、従来の一般的な救急室とハイブリッドERにはどのような違いがあるのでしょうか?
ハイブリッドERの大きな特徴の一つとしては、重症患者の診療と治療を同時に行える設備が整っていると言う点が上げられます。その為、一刻を争う重症患者の救命において大きな効果を発揮すると言えます。
この点において従来の救急室では、重症患者に対する一部の対応において、診断と治療を同時に行う事ができない部分もあった事から、死亡率にも大きな影響を与えていました。
ハイブリッドERを導入する為には、ただ設備を導入すればよいと言う訳ではなく、予算を捻出するための自治体への交渉や、設備を設置するための工事、更には設備を有効に活用するための院内での研修等も行わなければならず、導入までに一年以上の時間を要する場合もあるようです。
その為、国内におけるハイブリッドERの数は、2017年現在ではまだ少なく、全国で6カ所のみとなっています。今後はさらに増えていく事が予想されますが、急激に増えていくと言う事は無いと思われます。
救命救急医療と聞くと、救急車で運び込まれた一刻を争う患者さんの治療を行なうだけであり、その後の治療は他の医師に任せていると言ったイメージを持っている方も多いかもしれません。しかしながら、実際には救命救急医療では、初期段階での治療だけでなく、退院までの一貫した治療を行なっています。
また、特に高齢化が進む近年では、一人の患者さんが様々な合併症を患ってしまうと言うケースも多く、他の科の医師との連携を取りながら、適切な治療を長期的に行っていく事もあります。
このような点から、救命救急医療では、長期的な治療を通して患者さんの命を救うと言う意味で、その重要性も非常に高いと言えます。
今回はハイブリッドERについて解説すると共に、日本におけるハイブリッドERの普及状況、及び、救命救急医療の重要性についても解説してきました。現在では普及途上にあると言えるハイブリッドERですが、それが普及するにしたがって、より精度の高い救命救急医療が行なえるようになると言えます。