近年では観光目的で訪日する外国人は大変増えており、また、今後はオリンピックの開催等もある事から、更に増える事が予想されています。そんな中で、2015年度に外国人患者を受け入れた全国の医療機関は、外来患者で79.7%、入院患者で58.5%と言う調査結果が公表されました。
そこで今回は、今後、更なる整備が求められる医療機関における外国人患者の受け入れ態勢とそこに存在する問題点について解説します。
外国人患者を受け入れた医療機関のうち、日本語でのコミュニケーションが困難な患者がいたと答えた割合は65.3%を占め、その様な患者への対応にどの言語を使用したかとの問いに英語と答えたのは56.8%と最も多く、次いで中国語が26.6%、日本語も26.0%でした。
また、外国人患者とのコミュニケーションをとる際に医療通訳士を介したと答えた割合は12.7%でした。以上の事から、外国人患者に対し英語での対応もままならない状態の病院は多数存在すると言えます。
医療現場で使用される英語は専門的な用語が多く、一般的な通訳や、少し日本語、或いは外国語が話せる程度の一般人では、通訳をすることが困難です。専門的な知識を持たない人が誤訳をしてしまった場合、薬の誤飲等、些細な事でも命にかかわるようなトラブルへつながってしまうので注意が必要です。
また、医療通訳士の手を借りる事も選択肢の一つとして考える事は出来ますが、現状、日本では医療通訳士の国家資格は存在しません。そのため、同じ医療通訳士であっても、その技術は人によって相違があると言う事も考慮すべきでしょう。
それでは、今後医療機関では外国人患者に対して、どのような受け入れ体制を整えていく必要があるでしょうか?
第一に要求されるのは、医師自身の外国語力の向上です。しかしながら、一人の医師だけで複数の言語に対応する事は難しいです。そのため、電話通訳等も含め、言語ごとに対応できる医療通訳士との連携体制を整えておく必要があります。
また、外国人患者の受け入れに当たって考慮したいのは言語の問題だけではありません。特に宗教上の理由から、食べられない物がある患者や、礼拝が必要な患者にはそれに対応するための設備を整えておく必要があります。
医療機関における外国人患者の受け入れに関する問題について解説してきました。これらの問題を解決する為の体制を整えるには、語学力の向上を図るだけでなく、言語や宗教等の異文化に対する深い理解が必要と言えます。