キャリアチェンジでは、「開業医」を目指す医師も少なくありません。医者としてのキャリアを活かしつつ、経営者キャリアも積んでいくという特徴がありますが、自分が目指すクリニックを創設するというやりがいのある選択肢です。
ここでは医療経営者をサポートする国の3つの助成金について説明します。
非正規社員を正社員雇用に転換させるなど、従業員のキャリアをアップさせた医師経営者が受けることのできる制度です。例えば、未経験者を採用せざるを得ないケースがありますが、非正規雇用契約で様子を見ながら力になる人材であれば正規雇用をすることで助成金が支給されます。
これから示すのは、平成29年度に内容が改正された中小規模のクリニックについての内容になります。非正規社員とは「派遣労働者」や期間限定の「有期契約労働者」、「短時間労働者」といった業務従事者のことです。
正社員への移行や、非正規社員の能力向上をするための職業訓練の実施、賃金を見直し増額した場合といった働く意欲を引き上げることに着手したクリニックに支給されます。
正社員移行と職業訓練実施でもらえる助成金について説明します。
正社員への転換をした場合、条件等で助成額が違ってきますが、中小規模のクリニックであれば、条件によって約30万円から最高額では72万円が一人当たり支給されます。
人材育成を目的とした職業訓練は「賃金助成」と「経費助成」の2つがあります。前者は、一人あたり1時間で760円、生産性が高くなると認められたクリニックでは960円が助成されます。
後者は、訓練内容と訓練時間によって助成額が変わります。例えば、一般的な訓練内容で時間数が100時間以上200時間未満の場合は、最高限度額は20万円です。
以前は「キャリア形成促進助成金」と呼ばれたこの制度は、キャリアアップ助成金対象労働者である非正規社員以外の、つまり正社員を対象とした専門性を深める職掌訓練をした医師経営者が受けることのできるものです。
既に正社員である従業員はもちろんですが、キャリアアップ助成金制度で非正規雇用から正規雇用した労働者にも対象となるため、継続的に労働者育成を続けることができる特徴があります。
4つの助成コースがありますが、特定の業種に限定されていない、「一般訓練コース」と「キャリア形成支援制度導入コース」の2つの助成制度が、クリニックにはフィットします。
「一般訓練コース」では、一人1時間あたり380円または生産性の要件内であれば480円の賃金助成が受けられます。また、訓練に掛かる費用負担が最高で20万円支給されます。
「キャリア形成支援制度導入コース」では、雇用している正規社員全員を対象とする「セルフ・キャリアドック制度」と社員が自発的に訓練を受ける必要のある「教育訓練休暇等制度」の2つがあり、それぞれ約48万円または生産性の要件内の場合は60万円が支給されます。
キャリア継続ができずにいる求職者に労務に携わるチャンスを与えるクリニックが受けることのできる奨励金が「トライアル雇用助成金」です。医師と看護師やほかのスタッフたちと問題なく働くことができるかどうかの見極めで雇用のミスマッチ回避ができる特徴があります。
基本条件として、今まで医師が働く職場での就労経験がない者でクリニックへの従事を希望する者や学校卒業後3年以内の定職に就けなかった者などを「有期雇用契約」をし、原則3か月の間、雇用することで助成金が支給される仕組みです。
助成額は、一人あたり1か月につき最高額4万円を受け取ることが可能です。また、35歳に満たない「ひとり親」を試用する場合は、5万円になります。
メリットのある国の助成金制度ですが、諸条件が多い上に年度毎に内容改正されることもあり、特に経営者という未知の分野に転身した医師にとって、申請は煩雑な事務作業です。
社労士やクリニック開業のコンサルタント会社などの信頼できる専門家や会社探しが、手抜かりのない開業医へのキャリアチェンジ準備となります。