AIの技術は日に日に進歩し、様々な領域において開発・導入が進んでいます。医療においてもAIの活用を実現するべく国内外で研究開発が進んでいますが、最近のトピックとして「AIのがん検診への導入」に着目して最新の情報をお伝えしていきます。
AIは様々な分野に応用できる可能性があり、ここ数年のトピックになっています。医療においても例外ではなく、診断補助や新薬の開発においてAIを応用するための試みが続けられています。
医療で用いるAIといえば、「Watson」が白血病をわずか10分で見抜き、治療法を割り出したなどの報告が有名です。特に画像診断などはAIが得意とする分野であり、医者顔負けの結果を残すことに成功しているのです。
2017年にも、AIに関する様々な成果が得られました。家電や電子機器などの性能は飛躍的に上がり、10年前には考えられないような次元になってきていますが、AIの技術も飛躍的に水準が向上。AI開発は想像の範囲を超えて日進月歩を遂げているのです。
2017年7月、国立がん研究センターで、AIを用いて大腸がん・前がん病変を発見するシステムが開発されました。内視鏡検査時にAIが診断をサポートするもので、大腸がん・前がん病変を自動的に検知する仕組みを作ることに成功しました。
前がん病変である大腸腫瘍性ポリープは見逃されることも多いですが、このAIのシステムを使えば前がん病変・早期がんを98%の発見率で見つけることが可能。医師の画像診断を補助する強力なツールとして位置づけられていくでしょう。
また、2017年10月に「Radiology」で掲載された報告では、AIを乳がんの診断に応用する試みが取り上げられました。AIを活用することによって、乳がんになるリスクが高いと思われる病変が、実際にがん化するかどうかを97.4%の確率で予測可能であるというのです。
これまでは乳がん検診においてマンモグラフィ検査を実施し、乳がんが疑われる病変について生検を行っていました。そして、検査の結果によって「高リスク病変」と分類されれば手術に至ることも。実際に手術を行う時点では病変ががん化していなくても、将来的ながん化のリスクを考えて切除することも多く、女性患者にとっては負担になっている背景があったのです。
今回の研究では、切除が必要な病変であるかどうかを見極める仕組みを開発できたことになり、患者への負担を減らすことが期待されます。米マサチューセッツ工科大学の研究実施者は、「不要な手術を減らせるかもしれない」との見解を示しています。
大腸がん・乳がんなどのリスクを高い精度で早期発見するためのAI開発が進み、臨床で応用することを考えても十分な精度であることが証明されるようになりました。
医師の診断だけでは見逃しもありますが、特に医師のスキルが未熟な場合は取りこぼしも増えてきます。これまではひたすら症例数を経験することに重きを置いていたかもしれませんが、AIが得意とする分野は積極的に活用していくべきでしょう。
今回ご紹介した研究・報告ではいずれも共通して97%以上の精度でがん化のリスクを発見できるとされています。今後、臨床試験が行われ、有効性や安全性が証明されれば、あとは臨床に応用するのみ。医療現場にAIを用いた仕組みが導入される日もそう遠くありません。
各機関で次々とAI開発に関する事例は出てきています。いよいよAIが医療現場に導入されることも現実味を帯びてきました。特に前がん病変・高リスク病変を識別する画像診断の技術は飛躍的に進歩しており、近い将来がん検診への導入も実現する日がくるでしょう。