近年、AIの進歩には目覚しいものがあり、様々な分野で実際に活用されてきています。AIは、いよいよ医療の分野にも本格的に参入してくることになり、グーグルが4社に対して支援プログラムを開始していきます。
具体的に医療に活用されるとすると、各社の業務内容にどのような影響を与えるかを検討していきます。
1社目のAugmedixは、医師が電子カルテを管理するのを支援するプラットフォームを手がけており、そのプラットフォームにディープラーニングと自然言語理解を応用しています。ここに高度なAIの技術が組み込まれていくことが予想できます。
電子カルテは、我が国では2001年12 月に厚労省が策定した「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」において、「2006年度までに全国の400床以上の病院および全診療所の6割以上に電子カルテシステムの普及を図ること」が目標として掲げられ導入が開始されました。
実際に、臨床で活用され始めたのは2005年ごろからで、診療記録のカルテ記載だけでなく、検査オーダー、CTやMRIなどのデータ画像を利用できるようになりペーパーレスになったのは2007年頃に入ってからになります。
しかしながら導入当初は、特にカルテ記載の面において医療用語や言い回しなど独特のものがあり、医療現場と情報技術者との間で相当な剥離があったのですが、これがAIの導入でより効率的になっていくと考えられます。
Bytefliesは、機械学習を用いて医療用ウェアラブルからのデータストリームを管理および利用し、それを臨床試験や価値に基づく医療提供にとってより有用なものにすることを計画しています。ここにAIの技術が加わることで、より多角的な情報からすばやく正確な診断が可能になり、医師の診療技術への強力なアシストとなることが予想されます。
例えば、医師は臨床的に非常に稀であり、判断に難渋する症例に遭遇することがあります。その際、AIを利用すれば過去何十万件もの医学論文や文献をデータベースとして活用することで、適切な診断をいくつか提示でき、医師はその中から判断することができます。
また、医学研究への応用としてもAIは非常に優れた力を発揮できるでしょう。例えば、ある疾患に対する治療プロトコルを作成しようとした際に、研究モデルのグランドデザインを過去の文献データから分析することで、より効果的な臨床試験を探ることが可能になると考えられます。
BrainQは高度な機械学習と信号処理ツールを用いて、麻痺患者が再び手足を動かせるように支援するパーソナライズ治療プロトコルを開発しています。現在は主に体重により麻酔の投薬量をコントロールしていますが、麻酔深度は同じ投与量でも個人差があり本来は個別に対応されることが望ましいのです。
AIが導入されることにより、それぞれの患者さんに応じた、まさにオーダーメイド医療が可能になる可能性を秘めているといえます。
CytoValeは機械学習とコンピュータビジョンを敗血症の早期発見に活用しています。
敗血症とは細菌が全身の血中に移行することで、多臓器不全から死に至る疾患です。敗血症による米国人死者数は、乳がんと前立腺がん、エイズによる米国人死者数の合計より多いといわれており、革新的な診断、治療の開発が望まれています。
敗血症はその疾患概念から、早期診断、早期治療が生命線であり、AIによって適切な抗菌薬、介入時期が分析できれば敗血症治療への大きな進歩になるといえるでしょう。
以上のように医療分野における様々な面において、AI技術の介入は現在の医療レベルを大きく引き上げる可能性を秘めていると考えられます。
いわゆる手術ロボットのような、医師がロボットに完全に取って代わるまでには相応な時間がかかると思われますが、医師のアシストといった観点から見ればこれほど心強い味方はないかもしれません。