2017年11月、厚生労働省が「2018年度診療報酬改定に関する基本方針骨子案」を示しました。その中には、医師の働き方改革に関する内容も含まれていました。これから医療がどのように変化していくのか解説していきます。
政府が労働における課題を解決するべく、働き方改革を掲げています。事実、長時間労働など労働における課題の解決に向けて動く企業も増えてきました。医療の世界においては、以前より医師不足・医師偏在が問題となっていますが、現状としても医師の負担は大きいものとなっています。
2018年度の診療報酬改定に関する基本方針骨子案では、医師・看護師らの働き方改革を推進することが示されました。この基本方針の中では、医療従事者の負担軽減という方向性が提示されています。一部の医療従事者が疲弊している状況においては、地域医療を支えるという観点でも重要な方針といえるでしょう。
2014年には「特定行為に係る看護師の研修制度」が設置され、2015年の秋には実際に研修制度が始まっています。看護師の役割を拡大し、医師の負担を減らしていく試みなど、少しずつ取り組みは進んでいます。
今回の基本方針に医療従事者の負担軽減という方針が示されたことを受け、2018年度にはさらなる就労環境の改善が期待されます。
2017年6月には、安倍政権の成長戦略である「未来投資戦略2017」が閣議決定されました。この中で、生産性の向上などを目指すための戦略が提示されています。診療報酬改定の基本方針でも、医療におけるICT・AIの活用については継続して推進される予定になっています。
近年、電子カルテなどのツールはすっかり普及し、診療の記録や情報の参照がスムーズになったと感じる方も多いことでしょう。AIの技術も飛躍的に高まり、特に画像診断の分野において注目が集まっています。
2018年度の診療報酬改定に関する基本方針骨子案では、地域医療をサポートする上で有用なICTを使った「遠隔医療」の推進が提示されました。遠隔医療への期待は年々高まっており、実際の市場動向としても様々なツールが上市しています。2016年にはスマートフォンとアプリケーションを活用した遠隔診療ツールも登場しているのです。
倫理的な問題はクリアしなければなりませんが、人的資源に限りがある地域医療を支えるためにも、テクノロジーの活用に期待が高まります。
院内処方と院外処方では、技術料に3倍もの開きがあります。これまでもこの違いについては疑問の声が寄せられることがありました。診療報酬改定に関する基本方針骨子案を提出した医療部会においても、調剤薬局のあり方については複数の意見が飛び交いました。
骨子案には、「いわゆる門前薬局・同一敷地内薬局の評価の適正化を推進」という文言が盛り込まれ、調剤薬局のあり方を見直すことの必要性が確認された形になります。
また、薬剤師は薬学部で6年学んだ上で資格を取得していますが、実際の業務としては専門性を発揮しきれていない側面もあります。単純に医師が処方した薬を調剤して、患者に説明するだけでなく、カンファレンスで治療薬に関する提案をするくらいが相応でしょう。医師の負担を減らすという意味でも、薬剤師の貢献度が上がることが期待されています。
医師不足や医療費の増大に直面している今、多角的に対策を講じていくことが大切になります。業務の分担やテクノロジーの活用を通して医師の負担を減らしていくことで、地域医療の医療従事者への負担が軽減されるでしょう。一朝一夕では解決できない課題ではありますが、一つずつできる対策を講じていく必要があるのです。