様々な事情でキャリアの中断を余儀なくされる女性医師は全年齢を合わせると70%に上ります。休職からの復帰は、離職期間が長いほどハードルが高くなるものですが、スキルアップの必要性や勤務時間の調整、職場環境など様々な要望に対して自力で交渉するのは非常に大変です。スムーズにキャリアを再開するために、行政や病院が行っている復職支援についてまとめてみました。
厚生労働省は日本医師会に委託して女性医師に特化した求人情報をまとめた無料のサイト、日本医師会女性医師バンクを運営しています。日本医師会会員以外でも利用でき、個別にコーディネーターがついて相談に応じてくれます。キャリアパスによって転科の相談や研修、専門医の取得条件など様々な事例に対する対応ができます。
また、専門的な相談にのってくれる医師のアドバイザーもいます。紹介後に勤務条件が変わってきてしまった場合など、就職後に継続して適切な勤務ができるようにアフターフォローも可能です。
再研修を引き受けてくれる病院の紹介も可能で、研修期間の奨学金や身分保障といった制度のリサーチもサポートしてくれます。公的病院や大学病院での勤務も紹介の実績があります。
各自治体でも女性医師の就職相談窓口やセミナーを開催しているところがあります。無料職業紹介のほか、保育に関する情報も得られるところがあります。具体的に県ごとの取り組みについて紹介します。
岩手県の医師支援推進室では、県立病院で復職に向けたオーダーメイド研修を行っており、非常勤としての雇用があります。時短勤務も対応可能です。 保育者の確保等、育児支援制度もあり支援が充実しています。
三重県の「おいないねっと」では、子育て支援に力を入れている病院の紹介があり、現在子育て中の医師が相談にのってくれます。
鹿児島県では、いくつかの県内の病院で復職研修を実施しており、医師の希望に沿ってドクターバンク鹿児島から研修先の紹介があります。その他ほぼすべての県で女性医師の相談窓口が設置されています。窓口で、ベビーシッターなどの保育サービスを受けるための費用補助制度について相談も可能です。
女性医師の復職支援に関して県の医師会や保健医療局等に問い合わせてみると良いでしょう。
大学病院では積極的に女性医師に対する再教育を進めているところがあります。
東京女子医科大学は、最新の医療知識のアップデートや学び直しのためにネット上で無料セミナーを受けることができる、e-ラーニングを公開しています。年齢や経験年数を問わず登録すれば利用することが可能です。そのほかにも出身大学を問わず受けられる復職相談や研修プログラムがあります。また短時間正規雇用など女性がQOLを保ちつつ働きやすい環境づくりを推進しています。
岡山大学病院では、県域や出身大学にとらわれない復職相談を受け付けています。また、九州大学病院や筑波大学病院をはじめとして多くの大学病院で大学出身者を対象にした復職支援相談を行っています。出身大学の採用担当に問合せをしてみるのも良いかもしれません。
医局によっては女性医師の復職のために医局がベビーシッターを用意するといった事例もあるようです。みちのく総合診療医学センター、新百合ヶ丘総合病院などの民間病院で、独自の再研修制度を行っているところもあります。
専門的で高度な知識を必要とする医師の復職にはいろいろと困難がありますし、時間の制約や体力面での問題など心配事も多いと思います。一人で悩んでいるよりは様々なサービスを利用してみて、ご自身の心配事をまず相談してみるのも良いのではないでしょうか。話し合える女医仲間やプロの手を借りることもおすすめの方法です。