医学部を卒業して医師免許を取得すると、当然医師として働きはじめるのですが、その形は人により様々です。また、経験年数に応じたキャリア形成というものがありますので、それぞれ具体的にどのように選択していくべきかを紹介してきます。
国家試験合格後、ほとんどは臨床研修医として各地域の研修指定病院で2年間の研鑽を積みます。現在の臨床研修医制度では内科や救急、地域医療が必修で、外科や小児科、産婦人科、その他は選択制となっています。
ここで、迷うのは大学病院で研修医をするか、一般の急性期病院で研修を積むかです。それぞれに良いところはあるのですが、大学病院は何と言っても症例が豊富で全ての領域が揃っている点です。
また、大学は研究機関ですから、アカデミックな研究をたくさんしているので、将来的に医学研究者を目指す学生にはいい選択と言えるでしょう。しかし専門に偏った症例も多く、いわゆるプライマリーケアを学ぶには適しているとは言い難いでしょう。反面、一般病院ではいわゆるコモンな症例が多く学べるため、診療録を身につけるという面において、初期研修としては理想的な環境であるかもしれません。
ここで将来選択するべき科を実際に経験し、2年目以降の後期研修医、専門医課程へと進んでいきます。かなり特殊な例ですが、臨床医を目指さずに国家公務員の医系技官に挑戦する学生もいます。いわゆるキャリア公務員ですが、国内の保険事業に関する行政を担当していくことになります。
医師免許取得後3年目からは、専門的な医師となるべく本格的な臨床医への道を歩み始めます。具体的に初期研修の2年間に加えてその後の3年から5年程度で専門医試験資格を得られる科が多く、この数年間でその医師の一生のキャリアの基礎が出来上がるといっても過言ではありません。ここでも初期研修と同様に大学病院あるいは地域の一般病院を選択することができます。
初期研修で選択した病院でそのまま後期研修に入る医師も多くいます。慣れ親しんだ環境というのも大きいですし、初めから、例えば外科医志望であれば、外科領域に秀でた初期臨床研修指定病院を選んでいる場合も多いからです。
このように、後期研修、専門医課程のことも踏まえて初期研修病院を選択することも重要です。臨床医としても3年目以降は実際に主治医となって患者を受け持ち、病院としても特に一般病院では、ある程度の戦力として期待されることも多いです。
また、この間には多くの学会発表を任されます。先輩医師に指導を受けながら、稀に遭遇するような症例を担当したりすると積極的に学会発表を行い、専門医としてのキャリアを形成していきます。
10年目になり、専門医としての知識も技術もある程度のレベルになると、いよいよ病院でも医長以上の責任ある立場を任されることになります。総合病院でも、主戦力となり、病院を引っ張っていく立場になります。
これまでは指導される立場であったのが、研修医や専攻医を指導する立場にもなります。また、もともと研究医としてのキャリアに興味のある医師は、後期研修からこのぐらいの年数で大学院に入学したり、大学病院に帰り臨床をしながら研究に励み、大学人として臨床のみではなく研究や教育を担う医師もいます。
10年目ではまだ早いですが、このあたりから開業を意識し始める医師もいます。もともと親が開業医で継ぐパターンもあれば、新規で開業を行う医師もいます。多くの場合は、10年目までに臨床医として務めた地域で患者の信頼も得ている背景から、その地域での開業を志す場合が多いです。だいたいこのぐらいの年次で、その医師の将来のキャリアの方向性は決定されるといっていいでしょう。
一口に医師といっても、そのキャリアのパターンは本当にそれぞれであり、ここでは紹介し切れませんでしたが、産業医など企業の検診を担当したりする仕事もあります。
また女医さんの場合、結婚し子育てと両立させるために常勤ではなくパートタイマーとしての生き方を選択することもあります。医師は何れにしても激務ですので、自分の性格、働き方に応じて自分にあった未来像を選択していくことが重要になります。