医学生は医学部卒業後、医師免許を取得し、2年間は初期臨床研修を行います。この間はスーパーローテといって内科や外科、産婦人科、小児科、精神科、など各科を短期間で研修します。そして3年後以降に、専門医としての勉強を進めていきます。その間の医師の収入はどのように推移して行くのか、様々な進路からより具体的に紹介していきます。
医学部を卒業した学生は国家試験合格後、臨床研修医として大学病院、あるいは各地域の研修指定された病院で2年間の研鑽を積みます。臨床研修医制度では内科や救急、地域医療が必修で、外科や小児科、産婦人科、その他は選択制となっています。
この間は、いわゆる専門課程ではないですし、専門的に技術を持っているわけではありませんので、病院としても研修医としての扱いになります。給料もそれ相応の額になっており、具体的な年収は300万から400万円付近に設定されている病院が多いです。
実はこの年収も、ある問題があり改善されたのです。この新臨床研修医制度が始まるまでは、大学を卒業すると大学病院各科の医局に属して研修医として働いていました。しかし、あまりにも薄給でアルバイトをしないと生活が成り立たず、夜間当直などの過労が問題になったことで、研修医には最低年収300万前後は確保させる方針になりました。ただしあくまで平均値であり、各病院によって差はあります。
傾向としては大学病院や都市部の病院、研修医に人気のある病院は給料が少なく、地方に行くほど年収は高くなります。 稀に地方病院の中には研修医の時点で年収1000万円に届く報酬を提示しているところもあります。それは地方病院では研修医といえど、ある程度の戦力を期待されているからに他なりません。
病院、地域ごとに差はあるといっても、初期臨床研修の2年間はさほど収入格差はありません。3年目以降は各科の専門的な医師として勤務し始めますので、そこで選択する科、病院、勤務形態によって年収に幅が出てきます。
科ごとの違いでいうと、皮膚科や眼科、耳鼻科などの、いわゆるマイナー科で時間外や救急業務、当直業務がない科を選択すると、基本給以外のインセンティブが発生しにくいため、高収入は得られにくくなっています。逆に内科や外科、産婦人科などのハードな勤務が必要なメジャー科を選択すると、基本給以外の時間外や救急業務、当直業務手当が発生するため、高収入を得ることができます。
この期間も初期研修期間と同様に、病院での給料システムの相違や、地域により収入は千差万別となっています。傾向としては、やはり地方へ行くほど人材不足のため、給料は高めに設定されています。ですので、地方病院のメジャー科でハードな勤務をこなせば、年収はこの時点で1000万から場合によっては1500万超えを目指すことも可能になります。
しかし、医師免許取得後3年目から10年目というのは医師にとって収入ではなく自分のスキルや将来的な専門性を磨く時期であり、専門医取得にベストな研修指定病院で勤務する医師が多いので、そこまで収入を重視するものではないでしょう。
10年目以降で専門医として働き始めると、収入の幅もある程度は自分でコントロールできるようになり、各医師によって大きなばらつきが出ます。例えば大学病院で務めた場合、大学からの給料は薄給ですので、アルバイトをして収入を補うことになります。
専門医を取得しているのであれば高額な当直アルバイトや外来のアルバイトを医局から紹介されることも多く、大学の収入以外にアルバイトで年収数百万から1000万を稼ぐこともできます。生活のほとんどはアルバイトの収入で補っている医師も多いです。
また、一般的な急性期の総合病院で勤務医として務める場合でも、常勤として当直や救急もこなすハードな勤務をこなせば年収1500万円を超えてくることは珍しくなく、地方や病院によっては年収2000万円を超える勤務医もいます。
逆に、家庭を持つ女医さんのように夜勤や時間外の勤務は厳しい場合は、非常勤として勤務をし、収入は少なくなりますが、勤務時間を調整する働き方も可能です。 また、この時期ぐらいから開業を意識し始める医師もいます。当然ですが開業医となれば個人経営者になりますので成功すれば収入は数千万円から億に達する医師もいます。
このように医師の収入は、臨床研修医時代はさほど大きな差は見られないものの、それ以後は選択する専門科や病院、地域や勤務形態によって幅があります。 医師それぞれの目的やライフスタイルに応じた勤務形態や病院を選択することが重要です。