地方を中心として、医師不足は依然として深刻です。ネット上でも多くの求人が掲載されており、医師という資格さえあれば転職は容易のように感じてしまいます。
しかしいくら求人があっても、医師として転職すべきでない時期があることをご存知でしょうか。今回は、なぜその時期に転職すべきでないのかを解説します。
診療報酬改定により急性期病棟が減らされ、代わりに地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟が増加傾向になっている現在の医療現場。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を目前に控える中、病院が医師へ求めるスキルも、急性期の専門医から、急性期の専門性を残しつつも一般内科なども診れる、ジェネラリストへと変化しています。
よって医師が転職するにあたって重要となるのが、医師という資格だけではなく、医師としてどんなスキルがあるかという点になります。
転職を検討するにあたっては、まず病院側から「ほしい」と思われるスキルや手技を身に付けるべきであり、専門医や診療における手技が不十分である時期は、まだ転職すべきでない時期であるといえます。
2017年の有効求人倍率が1.50倍で高水準だと報道される中、医師の有効求人倍率は2013年現在で歯科医師・獣医・薬剤師を含め10.05倍と、高水準で推移しています。この高い求人倍率から、「こんな職場は耐えられない」「もっと良い職場があるはずだから」と短期間で転職を繰り返すことは、大変危険です。
求人数が多いとはいえ、採用する病院側としては「より長く働いてくれる医師」を求めています。よって数カ月から半年ほどで転職を繰り返す行為は、採用してもまたすぐ辞職してしまう可能性が高く、医師の転職において転職先から最も敬遠されるケースとなります。
そのリスクの高さは、ある転職エージェントが転職を繰り返す医師に対して「辛抱が足りない」として、思いとどまるよう説得することもあると話しているほどです。
継続して働く期間が長ければ長いほど、転職先から「この先生ならば長く働いてくれるだろう」という信頼を勝ち取ることができるため、次の転職においてより条件の良い職場と巡り合える可能性が高くなります。
よってもしご自身が、数カ月から半年ほどの短期間で転職を繰り返している場合は、なぜ転職したいのかを振り返るとともに、最低でも3~4年は継続して働くことをお勧めします。
医師が転職を検討するきっかけによっても、転職して良い時期かどうでない時期かが分かれます。きっかけを考える上で重要となるのが、「明確な目標や理由があるかどうか」という点です。
子育てや介護などによる家庭の事情や、医師としてのスキルアップを目指すなど、転職に対して明確な理由がある場合は、転職先に対しても明確な条件を提示することができます。
例えば子育て中ならば「時短勤務を認めてくれる職場」、スキルアップならば「専門科に特化した職場」などとなります。しかし、「明確な理由はないけれど、今よりもっと良い条件の職場へ転職したい」という考えでの転職では、そういった明確な条件を提示することができません。
「ここの病院の、この部分が自分の要望と合っているので転職したい」と決められるような条件がないまま転職すると、転職後も他の職場に目移りしてしまい、結果として先ほどご紹介した短期間に転職を繰り返すリスクが高くなることも考えられるのです。
よって明確な目標や理由がなく、「人間関係が良くないから」「思っていたイメージと違うから」といった安易な理由で転職するのは避けるべきだと考えます。
医師の転職がふさわしい時期、それは「医師として自分がどう働いていきたいのか」を明確にできた時であるともいえます。
30代から40代に多いとされる医師の転職ですが、実は今、50代以上の転職も増加しています。医師としてどの時期に転職するか。その時期の見極めが、その後の医師としての人生に大きな影響を与えるのです。