医療業界で働く医師がいなくなることはありませんが、昨今の医療業界は社会情勢の変化などから大きな影響を受けており、ある意味では非常に厳しい局面に立たされていると考えられます。保険費の未納問題や労働環境のブラック化等、経済の悪化と共に様々な問題が噴出している医療業界ですが、このような時代の移り変わりの中で、医師に求められる役割にも変化が訪れています。
そこで、今回は変わりつつある医師のプライオリティ、市場の動向についてお伝えしてまいりたいと思います。
従来、医師に求められていたものと言えば経験した症例数、手術実績、提出論文、技術や知識面などのスキルといったものが挙げられますが、昨今では事情が変わってきているようです。その内の1つが「語学スキル」です。経済の変化、円安等の事情によって、国内には多くの外国人の方々が来られるようになりました。
元々、日本は世界から見ても一大観光地として名前を挙げられますが、今や外国人の方が来られる理由は観光だけではありません。実は、海外から日本に移り住む外国人の方々も、非常に多くなっているのです。日本が好きだから、あるいは日本で仕事をすると収入が安定するといった理由で来られている方も多く、病院に来られる患者様にも外国人の方が増えているのです。
そのような状況もあり、大規模病院を中心に"英語を中心とした語学スキルを持つ医師"を求める動きが活発化しています。このような傾向はまだ全国的ではないものの、外国人労働者の受け入れ拡大を政府が決めた今、ニーズがより増加していく事は間違いないでしょう。中でも英語、中国語を話すことができる医師の需要が、今後更に高まっていくものと思われます。
前述の通り、基本的に医師に求められている物と言えば経験、スキルといったものが中心でしたが、実は今、診療科目によっては状況が変わってきています。例えば、外科系の科であれば従来のように技術・執刀経験などが転職時の採用条件として厳しくみられますが、内科系の科の場合は、少し事情が変わってきています。
従来のようなスキル、経験といったものも勿論求められるのですが、実はそれに加えて"コミュニケーション能力"や"患者様、あるいは患者様の親族等に寄り添うことができる能力"等が求められるようになってきています。事実、医師の転職現場では、医療機関が医師に対して求める条件はクリアしているものの、採用には至らないというケースも頻発しています。
このような傾向は、特に小児科を中心に見られるようになってきている為、転職をご検討の医師の皆さまは注意が必要です。
現在、医療業界の動きとしては、医師の都市部への一極集中を避け、地域毎の偏在を解消するべく様々な施策が打ち出されています。ただ、厚生労働省の地域医療構想を受け、各自治体がこの課題に着手している所ですが、まだそれほど大きな変化が出ているという事実は聞きません。
実際の成果はまだそれほど見られないにしても、都市部から地方へと"医師を集めようとする動き"が着実に顕在化を始めていることは確かです。地域医療、在宅診療、緩和ケアなどへの注力が増していく中で、地域医療に力を入れる医師のニーズは既に高く、申し分のない待遇で求人を掲載している医療機関も少なくありません。利便性の高い都市部はやはり人気がありますが、今後はまた状況が変わってくるものと推測されます。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |