昨今、医療業界に大きな変革をもたらしている物と言えばICT(情報通信技術)を利用した様々な技術ではないでしょうか。そして、このICTを活用する上で外せないものがビッグデータと呼ばれる存在です。そこで、今回は意外にも知らない方が多いであろうビッグデータと医療業界の関係について、少し迫ってみたいと思います。
ビッグデータとは、決して大きなデータのことを指しているわけではありません。近年、IT業界を中心に、取り扱うことのできる情報の容量、そして情報通信における処理速度は加速度的に上昇しており、その進化は留まることを知りません。皆さんが毎日使用している携帯電話の通信に関しても、近々次世代規格である5Gを導入し、より大容量のデータを瞬時に取り扱うことが可能になる予定です。
インターネット上に流れる情報はいろいろな形で存在していますが、基本的にはデータとして集積されているものとして考えられます。この、集積された情報がビッグデータと呼ばれています。身近な所で言えば、大企業が独自に集積している個人情報も、場合によってはビッグデータと呼んでも差し支えはないでしょう。ビッグデータの容量は基本的にTBを超えるものであり、また、個人情報と関係したものとされます。
そして、リアルタイムに変化する可能性のある、不定形な情報を含むという特徴があります。つまり、企業がマーケティングに使用しているデータと考えると、比較的分かりやすいかもしれません。そして、このビッグデータが既に医療業界においても活用され始めているのです。
国内では、個人が負担する医療費の増加がよく問題として取り上げられています。超高齢化社会へと着実に歩みを進めている日本では、若年層よりも老齢層が増してきており、人口の割合が逆ピラミッド型でよく表現されていますよね。その中で、疾病に罹る方の割合が今後も加速度的に増してくることが予測されているため、医療業界においてコスト削減はマストな目標として掲げられています。
そこで白羽の矢がたっているのが、医療データをクラウドプラットフォームで用いるとする方法です。この方法は既にある団体が提示しているもので、治療期間の短縮や、各患者様における自己健康管理の増進、医師のパフォーマンス向上などが期待されています。
ビッグデータを活用することにより、適正な診断を素早く行うことや、遠隔から患者様の健康状態を個人、病院が適正に把握すること等も可能になると予測されているところですが、既にカリフォルニアで導入した病院では、医師のパフォーマンス向上効果がみられ、年間1380万ドルがコストカットされた実績も出ています。
ビッグデータは既に医療現場において活用され始めていますが、中でも大きな実績を出している具体例を2つほどご紹介したいと思います。
15%の市民が喘息を患っているこの都市では、喘息が多発する理由を調べるためにプロジェクトが経ちあげられました。GPSセンサー付きの吸入器を利用し、周辺環境の情報を収集可能にするシステムを導入。その結果、原発地域の特定に成功しています。
院内にある全ての医療情報をデジタル化、一元管理可能なシステムにすることで、診療をスムーズに受けられるよう改善がなされています。また、抱えていた様々な問題を浮き彫りにすることも可能になった結果、再手術の割合を3割減に、不適切な抗生物質の使用を200名以上で防ぐなどの実績が出されています。
いかがでしたでしょうか。現在は大規模病院を中心に導入される、様々なITプラットフォームの数々ですが、当初の予定と比べると浸透速度が遅いと言われており、今後の展開はまだ見えてこない部分もあります。しかし、このような技術が既に活用されているという事実に関しては、より多くの方に知って頂ければと思います。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |