今や、日本人の2人に1人はがんになると言われています。このコピーは2010~2012年頃を目途に、国内でよく聞かれるようになりましたが、今では"より多く"がん患者が増加するのでは?とも言われています。
がん患者の内、3人に1人はがんで命を落としている現状であり、死因のトップには常にがんが座しています。
日本における3大療法は多くのがん患者に適用されていますが、明らかな改善作用が見られるケースはごく僅かであり、5年生存率は燦々たるものと言えるでしょう。
そのような中、「夢のがん治療薬」として、鳴り物入りで出てきたのがオプジーボ(ニブルマブ)ですが、臨床の現場からは非常に厳しい声が聞こえている状況です。そこで、今回はオプジーボが臨床現場にもたらした結果の一部について、ご紹介したいと思います。
そもそも、がん治療薬オプジーボとはどのようなものかご存じでしょうか。これは、免疫チェックポイント阻害薬の1種で、活動が制限されていた免疫細胞のブレーキとなる部分を解除し、自分自身の免疫力を使用してがん細胞への攻撃を行うというもの。
当初、メラノーマの治療を目的とされていたオプジーボですが、今では非小細胞肺癌・腎細胞癌にも適用が拡大されています。これはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品であり、承認されたのは2014年7月、同年9月に発売が開始されています。
新薬であるオプジーボはがん治療薬の中では高価であり、発売当初、1回の治療には130万円程度の費用が必要でした。今では、半額程度に価格も低下し、使いやすくはなっているものの、メルク社から免疫治療薬キイトルーダが発売される等、群雄割拠といった状況が起こりつつあります。
オプジーボは、免疫を活性化させた自身の力でがん細胞を攻撃するという特性を持っているため、副作用は極めて少ないものと考えられていました。しかし、臨床現場での使用開始から4年近くが経過しようとしている今、重症筋無力症、1型糖尿病を始めとする、数々の副作用についての報告が上がってきています。
2015年12月にオプジーボが、非小細胞肺がんへの適応が追加されましたが、その直後に日本肺癌学会が「オプジーボは夢の新薬ではない」と医療従事者に向けた声明文を発表しています。
同内容では、副作用への対策が必要であること、患者様に説明を徹底するように書かれています。また、大腸炎、肺臓炎、ギランバレー症候群等の重篤な副作用や、死亡例が現れている事も指摘されています。
また、製造販売元である小野薬品工業からは、承認されて以降、約半数の患者に何らかの副作用が発生し、その内の25%近くで重篤例が発生しているという報告があげられています。この事実には、改めて注意をしておきたい所でしょう。
今ではオプジーボの投与に関して"投与した直後から長期にわたり注意深く適切なモニタリングが必要" であると、医師の慎重な対応を促す声があがっています。数々の重篤な副作用が報告されている状況や、その対策方法について理解度が低い医師が患者に投与治療を行うことは、高リスクであると言えます。
また、オプジーボの有効性・安全性に関しては、"あくまでも"全身の状態が良好な患者において確立されたものであることを意識し、老齢患者への投与に関しても慎重に対応する必要がある事を、より多くの医師が知る必要があります。
まだ、抗がん治療の方法としては歴史的に浅い免疫治療薬ですが、今の所はそれほど目立った成果が出されていないように感じられます。現時点では、安易な投与による副作用被害を防ぐ意味でも、患者様への投与に際し、これまでに報告されているデータを各医師がしっかりと持たれた方が良いものと思われます。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |